株式会社JTB
JTB Corp.
心理的安全性がすべての出発点。JTBが目指す、全ての人が挑戦できる職場づくり
『違いを価値に、世界をつなぐ。』をステートメントに掲げ、DEIに「Belonging(ビロンギング)」を加えた『DEIB』を推進するJTB。2024年には「一般社団法人work with Pride」が策定するPRIDE指標において、最高ランクのゴールド認定を獲得している。社員一人ひとりが自分らしく働ける職場とはどうあるべきか。常務執行役員 DEIB担当 人財開発担当 働き方改革担当(CDEIBO)髙﨑邦子さんにDEIBへの思いを聞いた。
取材・文/中村茉莉花 撮影/清原明音
安心して自分らしさを発揮できる環境がないと、DEIは実現できない
—JTBでは、Diversity(ダイバーシティ)・Equity(エクイティ)・Inclusion(インクルージョン)に「Belonging」を加えた「DEIB」を推進されています。
髙﨑 邦子さん(以下、髙﨑) 当社は2007年からダイバーシティ推進室(現 DEIB推進事務局)を設置し、取り組みを進めてきました。はじめは性別・年齢・国籍といった“外見上のダイバーシティ”が中心でしたが、徐々に価値観や考え方の多様性も含めた“中身のダイバーシティ”の重要性に目を向け、さらに「Equity(公平性)」を重視した取り組みも始めました。
2018年から企業風土改革を本格的に進める中で、さらにDEIを促進するための概念として、「Belonging」に着目するようになりました。「Belonging」は、本来は「帰属性」と訳されますが、私たちは「心理的安全性」と定義しています。安心して自分らしさを発揮できる環境がないとDEIは実現できません。この「Belonging」にこだわり、2023年からDEIBとして展開しています。
—「Belonging」を重視するきっかけがあったのですか?
髙﨑 コロナ禍が大きな契機となりました。2021年度は売上の8割が消滅し、過去最大の赤字を経験。生き残りをかけた構造改革の中で、人員削減や給与削減も行わなくてはいけない厳しい状況でした。そんな中、社員の皆さんが「未来に向かって立ち直って、また良い会社にしていきましょう」と声をかけてくれ、私たち経営陣も大いに勇気づけられました。この「共に戦っていく」意識を平時にも保ち続けたいという思いから、「Belonging」を重視するようになりました。
5つの柱で進めるDEIB
—どのようにDEIBを進めているのでしょうか。
髙﨑 DEIBを推進するために、組織開発支援、ワークスタイル変革、キャリア開発支援、障害者雇用と活躍支援、ジェンダー平等という5つの活動軸を設けています。5つの軸にはそれぞれ約20の具体的施策がひもづいています。ジェンダー平等の中には、アンコンシャスバイアス解消や女性活躍推進、男性育休取得推進と並んでLGBTQ+施策があります。
LGBTQ+施策については、まずは「正しく理解する」ことから始めています。一般社員からマネジメント層、役員層にいたるまで階層ごとに研修を実施し、理解を深める機会を設けています。
2024年10月には社内相談窓口の設置やAlly(アライ)ネットワークも発足をさせました。Allyの活動では、外部講師にお越しいただいてのセミナー開催や、5月にはプライドイベントへの参加準備などを目的としたミーティングを開催しました。毎回15〜20名ほどの参加があり、活動を重ねるごとにAllyメンバーも増えてきています。
また、社内報「J’s Magazine」では、Tokyo Pride (2024年までは、東京レインボープライドの名称で開催)の活動報告などを発信しています。「職場ではカミングアウトしていないけれど、会社がこういう活動をしてくれて勇気づけられた」という当事者からの声が届いたこともあり、取り組みが「Belonging」につながっていることを実感しました。
—DEIBを促進するための、ユニークな活動もあるとか。
髙﨑 DEIBを社内に浸透させるボトムアップの取り組みとして、2018年から全国の支店や拠点で「Smile活動」を推進しています。Smile活動の目的は、 “自分たちが働く職場の風土は自分たちの力で良くしていく”こと。組織の責任者に「この人なら職場の風土を変えられる」と思う人を「Smile委員長」に指名してもらい、新入社員から課長まで様々な立場のメンバーから構成された「Smile委員」と一緒に活動を進めてもらっています。例えば、コミュニケーションの活性化を目的に、異なる部署の人とランチをする日を作ったり、ペットボトルのキャップを集めて途上国支援をしたり、店舗前の清掃活動をしたりと、各拠点によってその活動は様々です。
今年で8年目を迎えたこの活動も、ようやく昨年あたりから「自走化」してきたという手応えを感じています。「諦めない、言い続ける、やり続ける」をモットーにこの活動を進めてきましたが、組織風土が良くなれば、業績にも反映されるのだ、という実感をそれぞれの社員が持ち始めた結果なのだと思います。
今年4月から、制度もより公平に
—制度の面でも、大幅な改革を行いましたね。
髙﨑 今年4月から、就業規則・各種規程で「配偶者」としていた文言をすべて「パートナー」に変更しました。パートナートシップ制を適用し同性パートナーを含む事実婚の関係でも各種手当支給はもちろん、育児・介護による休職や特別休暇、短時間勤務なども対象になりました。福利厚生面でも、結婚祝金や卵子・精子凍結など医療費の貸付も含む各種貸付制度の対象にしています。
また、「生理休暇」を「ウェルネス休暇」に名称変更し、取得事由を大幅に拡大しました。性別問わず、健康診断の再検査や不妊治療、ホルモン療法、性別不合による性別適合手術など、自身の心身の健康を保つために幅広く利用できます。名称を変えた途端に、取得率が大幅に上昇し、もっと早く対応するべきだったと痛感しました。
私たち事務局の役割は、社員が気持ちよく働ける環境を整えること。体調や環境が整っていないと、どんなに優秀な人財でも本来の力が発揮できません。誰もが安心してライフプランを描けるよう、皆さんには制度をどんどん使ってもらいたいと考えています。
—Tokyo Pride 2025の出展ブースはどのような内容を予定されていますか。
髙﨑 今年の4月よりスタートした、“ALL LOVE WEDDING PHOTO PLAN inハワイ”というプランを体感できるような企画を予定しています。
このプランは、性別関係なく、お二人らしいスタイルでフォトウェディングを楽しんでいただける旅行プランで、すべてのカップルを祝福したいという思いを込めました。ドレス×タキシードはもちろん、ドレス×ドレス、タキシード×タキシードなど、どんな組み合わせでもお選びいただけます。
—素敵ですね!
髙﨑 DEIBも、LGBTQ+施策も、何も特別なものではなく、 “誰もが安心して働ける会社”をつくるための当たり前の取り組みです。将来はDEIBが健全に機能し、DEIBを推進する組織が不要になるような会社になればいいと思っています。そんな会社をつくるために、これからも皆さんと一緒に歩んでいきたいですね。





