キンドリルジャパン株式会社
Kyndryl Japan
「わたしたちの絆が、社会を変える」。キンドリルジャパンが空にかける2つの虹

左から上田菫さん、塩見寛行さん、松本紗代子さん、松本彩奈さん
2021年に誕生したキンドリルジャパン(以下 キンドリル)は、初年度からTokyo Pride (2024年までは、東京レインボープライド<Tokyo Rainbow Pride>の名称にて開催。)に協賛し、今年はトップスポンサーであるレインボースポンサーに協賛を拡大しました。
「キンドリルウェイ」というユニークな企業カルチャーをもとに、KINs(Kyndryl Inclusion Networks)というERG(従業員リソースグループ)を中心に社内外で取り組みを継続。これらの取り組みは社内外に影響を与え、『work with Pride』では三年連続のゴールド認定に加え、レインボー認定も取得。今年のプライド協賛と合わせ、結果として 「ダブルレインボー」が輝くこととなった。多様な社会を「当たり前」にリードする同社のカルチャーに迫る。
聞き手/髙松孟晋 撮影/清原明音
登壇者
コンサルト・プラクティス事業本部長 兼 インクルージョン・ダイバーシティ&エクイティ担当 専務執行役員 松本紗代子さん
インダストリー統括 製造事業本部長 執行役員 塩見寛行さん
プラクティス事業本部 デジタルワークプレース 兼 KINs LGBTQ+ Japan Co-chair 松本彩奈さん
プラクティス事業本部 クラウドデリバリー 兼 KINs LGBTQ+ Japanmember 上田菫さん
すべての人が活躍できる社会へ
ー今回、トップスポンサーである「レインボースポンサー」として協賛することになった経緯を教えてください。
塩見寛行さん<以下、塩見> キンドリルは、金融機関の基幹システムや交通・通信インフラなど、社会に不可欠なシステムを支える企業です。その安定運用には「人」が最も重要であり、すべての人が活躍できる環境であることを会社として重視しています。
Tokyo Pride 2025のテーマ「Same Life, Same Rights」は、LGBTQ+はもちろん、多様な人々が自分らしく権利を行使し活躍できる社会を目指すものと認識しており、私たちが目指す姿と非常に近しいと感じています。
また、協賛をゴールドからレインボーにすることで、ブースやパレードの参加人数が増え、私たちの目指す姿をより多くの方に見ていただけます。社内においても、キンドリルが人を大切にする会社だと知り、参加を通じて感じてもらう良い機会になると考え、今回の協賛に至りました。
ー協賛を拡大するにあたって、社内ではどのような調整がありましたか。
塩見 今年もスポンサーを継続することは前提でしたが、レインボーへの変更には予算増額が必要でした。これを実現できたのは、社長をはじめ経営層の深い理解があったからです。
昨年は社長夫妻もパレードに参加し、財務責任者も取り組みの意義を実感したと聞いています。普段接点のない社員が集まり、社内外の多くの人々と触れ合えた経験を経営陣が共有できたことが、今年の協賛拡大に繋がりました。
松本紗代子さん<以下、松本(紗)> グローバルのCSR(コーポレート・シチズンシップ・レポート)にも、去年のパレード参加メンバーの写真が掲載されました。そのインパクトは大きく、経営陣への説得材料になったと思います。

東京レインボープライド2024 プライドパレード参加の様子
「最短」で『work with Pride』レインボー認定を取得
ー昨年のインタビューでは、創業三年目にしてすでにWork With Prideで2年連続ゴールド認定を獲得されていました。その後一年間のKINsに関する取り組みについて教えてください。
松本彩奈さん<以下、松本(彩)> 昨年の東京レインボープライドを機に、KINsのLGBTQ+ Japan では6月のプライドマンスや、11月を「インクルージョン・ウィークス」として様々なイベントを開催し、その都度、アライ(支援者)を表明する社員は増えていきました。
これらの活動や『work with Pride』でのゴールド評価など、スピード感を持ったキンドリルのERGの活動を外部に発信し、日本のインクルーシブな文化を変えることに繋げようと、この一年は取り組みを外部へ積極的に伝えるため、他社との共同イベント開催など社外向けイベントを増やしました。その一つが、12月のNPO法人虹色ダイバーシティさんとの共同トークイベントで、ゼロからのERG立ち上げストーリーや、継続的な活動運営に関してお話しました。
この共同イベントは、キンドリル本社より、私たちKINs LGBTQ+ Japanのボランティア総活動時間に対してアワードを貰ったことも、イベントの実現につながりました。私たちのコミュニティは、我々が事業展開をしている世界60カ国のうち全体で4位の活動時間数で、これは、それだけキンドリルでのKINsの活動規模が大きく、社内でも存在感があることを表していると思っています。

トークイベントの様子。左から、KINs LGBTQ+ Japan 設立メンバー 小塚 巧さん、塩見寛行さん、松本紗代子さん
松本紗代子さん<以下、松本(紗)> これらの取り組みが『work with Pride』でも評価され、三年連続ゴールド、そして2024年度にはレインボー認定をいただきました。レインボー認定は特にコレクティブインパクトを生み出す企業に与えられるもので、本当にずっと欲しかったのですが(笑)、これは「最短」での取得だと自負しています。
また、弊社は有志企業による勉強会『レインボービジネスネットワーク』に主要メンバーとして参加しているほか、昨年はTDC global発行の書籍『私たちが共に、DEI の歩みを加速させるために』にも弊社の取り組みが掲載されました。
松本(彩) 6月のプライドマンスや、11月の「インクルージョン・ウィークス」では、LGBTQ+だけでなく、女性(WOMEN)や障害のある人(ABILITY)など各コミュニティもイベントを実施し、社内にアライの輪が広がったと感じます。
ーそうしたスピード感をもったKINsに関する取り組みの数々は、業界でも注目されているのではないでしょうか。
松本(彩) キンドリルのコミュニティは人事が作ったものではなく、完全に自発的に生まれ、今では社内で300名以上がアライを表明するに至っています。この点は社外の方からもよく質問されます。また、紗代子さんが社外で講演する機会も増えました。
松本(紗) 私だけではなく、KINsのメンバーを含め、年間約40のイベントに登壇しています。他社だけでなく、大学や国関連のイベントへの参加機会も非常に増えました。
私はコミュニティ単体というより、全体での取り組み方を経営層に話すことが多いです。また、各社のダイバーシティご担当者とお話しさせていただく際には、特に経営層への価値訴求や経営戦略への組み込み、社内での賛同獲得といった課題について相談を受けることが多いですね。
「わたしたちの絆が、社会を変える」
ーTokyo Pride 2025ではどのような企画をされていますか。
松本(彩) 「わたしたちの絆が、社会を変える」をテーマに、パレードや出展ブースを企画しています。コンテンツは上田さんが中心となって準備を進めています。
上田菫さん<以下、上田> 今年は最も大きなブースをいただき、目玉企画を2つ準備しています。一つはセルフフォトブース「Photomatic(フォトマティック)」で、弊社のウォームレッドやレインボーをテーマにした背景で家族や友人と撮影できます。もう一つはプロカメラマンによる撮影です。
「フォトマティック」では「人とのつながり」を楽しく形にし、プロカメラマン撮影では“「個人」そのものの素晴らしさ”を再認識していただく。この二つの体験を通じ、テーマに込めた思いを感じてほしいです。
パレードではトラックを用意し、DJブースを設置して盛り上げる準備を進めています。制作グッズも増え、昨年の倍以上の規模になる見込みです。
ー上田さんは入社2年目で出展ブースのコンテンツをリードされていますが、その経緯はどのようなものだったのでしょうか。
上田 私は昨年入社し、Tokyo Prideの案内に興味を持ち同期とパレードに参加しました。キンドリルとしてのイベント参加は初めてで、周囲は知らない人ばかりでしたが、一体感のあるイベントで「この会社に入ってよかった」と思えました。
その後アライ表明しコミュニティに参加したところ、Co-chair(共同リーダー)の松本彩奈さんから声をかけていただきました。入社1年目でためらいましたが、皆さんが「絶対に助けるし、一人にはさせない」と言ってくださり、一緒に頑張ろうと思いました。
松本(彩) 上田さんは熱意を持って取り組んでくれそうだと思い、打診しました。1年目の不安も理解していましたが、コミュニティ活動では役割分散が重要なので、リードとはいえ一人に業務が集中しないよう心がけています。
上田 私の活動を見て、同じ部署の方がアライ表明してくれることもあります。会社の活動としてだけでなく、個人SNSでの活動を見た新入社員から「自分も何かやりたい」と声をかけてもらうこともあります。
松本(彩) ERGの中心メンバーは比較的若手が多いです。年次が上がると多忙になりがちなため、新しい人が入ることで活動の中心が移り、意識がアップデートされています。熱意が次世代へ引き継がれている状況です。
ー最後に、今後の取り組みに関する展望をお聞かせください。
塩見 社内だけでなく、他の企業やNPO法人、大学との産学連携、さらには国レベルでの活動への参画を通じて貢献を増やしていきたいです。
また、取り組みに継続性を持たせたいと考えています。『work with Pride』も一度レインボーをいただいて終わりではありません。コミュニティも同様で、新しい人たちにバトンを渡し、その新しい発想でチームやコミュニティを活性化していく。もちろん、バトンを渡した人も引き続き活躍してもらうことが大切です。
松本(紗) 人の持つ力や可能性は非常に大きいですが、外部環境が要因で発揮できない状況は変えていかなければなりません。
誰かが応援してくれる、一人でも理解者がいると思った瞬間に、私たちは本当に強くなれます。私自身もそういう経験をたくさんしてきました。今回のトップティアスポンサーシップや大規模なパレード、出展ブースを通じて、ご覧になった方々がご自身の力強さを感じたり、明るく生きていくきっかけになれたら嬉しいです。
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キンドリルに根付く「人を大切にする」信念と、そこから生まれる温かな絆。同社がかける2つの虹は、私たちに、誰もが輝けるという希望を与えてくれるはずだ。





