日本ロレアル株式会社 x 一般社団法人Famiee
LOREAL JAPAN
日本ロレアルとFamieeのコラボで裾野が広がった、LGBTQIA+の認知
Tokyo Pride 2025 Pride Festivalのセクター間コラボレーションの一環として、共同でブース出展を行った日本ロレアル株式会社と一般社団法人Famiee。共同出展だからこそ実現できた取り組みについて、日本ロレアル山本達郎さん、ウィラコーンわたるさん、プラカサイバンさん、Famieeの内山穂南さんにお話しを聞いた。
取材・文/山本梨央 撮影/清原明音
ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンへの熱意に共感。コラボレーションに至った経緯
-ーまずはそれぞれの取り組みについてお聞かせください。
山本達郎さん(以下、山本):日本ロレアルは、世界で150以上の国と地域で展開するビューティーカンパニーの日本法人として、製品の開発からお届けまでを担当しています。社内の文化としても、フランスの会社ということもあり一人ひとりを尊重する土壌がもともとありました。2022年からダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの本格的な活動がスタートし、2024年10月からは、それまで個別対応していた同性パートナーシップを制度として整えた経緯があります。
内山穂南さん(以下、内山):私たちFamieeは、すでにこの社会に存在してきた多様な家族のかたちが、制度や公的な仕組みの中で長く見過ごされてきた現実に向き合っています。LGBTQIA+カップル、夫婦別姓の事実婚、シングルマザー同士で子育てを支え合う関係など、法の外側に置かれてきた“かぞく”は、決して例外ではなく、私たちの身近にある、ごく当たり前の姿です。
こうした“すでにある多様性”にきちんと目を向け、制度と暮らしの間にあるギャップを埋めていく社会のインフラのひとつとして、私たちはブロックチェーン技術を活用したパートナーシップ証明書「Famiee」を提供しています。
--どのような流れから、コラボレーションに至ったのでしょうか。
山本:Tokyo Pride Pride Parade & Festival(旧東京レインボープライド)への協賛は3年目でした。これまでは、日本ロレアルだけで何ができるか考えてきましたが、Tokyo Prideになぜ私たちが参加するのかを改めて検討し、当社だけでは実現できない、多角的な視点からダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンを考えるきっかけを作れないかと考え、NPOとのコラボがあると思い至りました。
内山:現在、Famieeを賛同・導入いただいている企業や団体が100以上にいらっしゃいます。昨年は、その賛同企業様と一緒に出店させていただきました。
今年も出展を検討したく、セクター間コラボレーションに参加した中で日本ロレアルさんと初めてお会いし、お話をさせていただいた際に、熱量高くお声がけいただき、ご一緒する運びとなったんです。
山本:FamieeさんとTokyo Prideで実現したいことについてお話しした際に、エネルギー感が同じだなと、とても強くご一緒したいと思ったのです。初めてお話ししたときからとても盛り上がり、どんな展開をしていきたいかと帰りの電車でもアイデアが止まらないほどでした(笑)。
内山:セクター間コラボーレーションにおいて、日本ロレアル様は、「美の力を通じて、すべての人が自分らしく生きられる社会をつくる」という理念のもと、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの取り組みを企業文化として根づかせてきたことを知りました。その中で、制度や環境だけでなく、「心の壁」にまで丁寧に向き合い、変化を生み出していく姿勢に深く共感したところが大きかったですね。
ブース来訪者は2700人。少しでも身近に感じられる工夫をこらしたパネル展示
--コラボレーションが決まってから、どのように出展内容を考えていったのでしょうか。
ウィラコーンわたるさん(以下、ウィラコーン):私はブース出展のリーダーを担当したのですが、ロレアルとして世に伝えたいこととFamieeの考えはマッチしていると感じていました。それをどうしたら一緒に最大限に伝えていけるのか、表現方法を探ることにしたのです。まず、出展チームの中でも、Famieeのサービスを知らないメンバーがいたので、どういうサービスなのか、そしてサービスの背景にある同性カップルが直面する課題を学んでいきました。
内山:Famieeのメンバーは全国のいろんなところに住んでいて、共同代表の内山幸樹はアメリカにいるくらい点在しています(笑)。そんな中で、通常の定例MTGも週に1回オンラインで実施しており、当日に向けての準備においては、なかなか打ち合わせの機会を設けるタイミングが難しいこともありました。それでも、常にわたしたちFamieeの動きやすい方法をご確認いただき、イベントの成功に向けて一緒に作り上げていただいたのが心強かったです。
ウィラコーン:ブース出展にあたって大事にしたことは、まずは認知を広げたいということ。ご来場いただく方に対して、親和性を持たせながら、ポジティブでサクッと見られる表現にすることは意識していました。
--実際には、どのような展示内容になったのですか。
ウィラコーン:いわゆる人生ゲームのような「ライフシチュエーションパネル」の形で、同性カップルが直面するできごとを紹介していきました。ロレアルの製品のサンプリングやプレゼントを渡すまで、並んでいただいている間に展示を見ていただく形です。
ウィラコーン:たとえば、同性カップルが旅行に行く際に、法律上の夫婦であればマイルを合算できるのに、同性カップルはそれができない、などのストーリーをピックアップしました。できるだけ当事者だけでなくストレートの人たち、関心がない人たちにとっても、親和性のあるシチュエーションを選んだ方が、理解促進につながるかなと思ってのセレクトでした。
内山:当日は、こんなに人が来るのか!と驚くほどたくさんの方にご来場いただきました。展示をすべて見終わった方にはFamieeのチラシをお渡ししていたのですが、そのチラシも1日目に準備していた約750部を全て配り終えてしまって…。最終的に、2日間で2,700名もの方がブースに来てくださいました。
プラカサイバンさん(以下、プラカサ):お客様が並ぶ際に、しっかりとパネルを見てくださる方がいたのは印象に残っています。二人組でいらっしゃった方が小さな声で話しながら「確かにこういう人生ってあるよね」「こういう場面は大変だよね」という声が聞こえてきました。
内山:展示を読みながら、改めて対話が生まれていたのも印象的でした。たとえば、3〜4人組でいらしていた方の中には、お一人だけがLGBTQIA+の当事者であるケースもありました。そんな中で「こういう場面って本当にある」と話してくださると、説得力も増していた気がします。
山本:滞在時間も非常に長かったですね。そして、ブースを担当していたチームのメンバーは国籍も多様だったのですが、「日本の同性カップルがどういう課題に直面するのか」を学ぶ機会としても意義のあるものだったかと思います。
当日のブース展示に留まらない。広がり続ける学びの輪
--実際にご参加した方々の意識の変化などはありましたか。
プラカサ:今回、ボランティアとして手を挙げて参加してくれた社員が非常に多くいました。知識がないメンバーでも、この企画が実現できるまで、ディスカッションして、知識を共有しながら、周りのメンバーにも伝えてくれて、徐々に応援の気持ちが強くなっていった気がします。
山本:当事者のカップルから聞いたリアルなライフストーリーもセッションで共有してもらったこともありましたね。
内山:日本ロレアルのみなさんが、本当にあったかいんです。私たちもロレアル社員だったかな?と思ってしまうくらい、準備段階から当日を迎えるまで、一緒に目線を揃えながら進めてくださったのが嬉しかったですし、これだけ素晴らしい方々が日本にいるのだなと認識できました。
ウィラコーン:コラボレーションするにあたって一番達成したかったのは、LGBTQIA+の方々がどういう状況にいるのかを普段は知る機会の少ない人たちに届けるということ。日本ロレアルのブースに来る方の中には、美容への関心が100%という方ももちろんいらっしゃいます。そういう方々に対してもFamieeさんのサービスを伝えたり、現状を伝えることで、情報提供をできたのは、目的を達成できた気がしました。
内山:私たちは非営利の一般社団法人なので、こうした催しの際に出展費用を捻出するのが難しい場合もあります。だからこそ、企業様と取り組むことで、日々の自分たちの活動だけでは届けられない人たちにもお伝えできたという実感がありました。私たちの理念に共感してくださった日本ロレアルさんと一緒に取り組めて、本当に良かったです。この共創の経験を、イベント後もそれぞれの現場で持ち帰り、制度や文化のアップデートにつなげていきたいですね。この出会いを、一過性ではない「未来をともに育てる関係」にしていけるよう、引き続き歩んでいきたいと考えています。





