パナソニック コネクト株式会社
Panasonic Connect Co., Ltd.
1000人のアライを目指して。パナソニック コネクトが描くDEIのかたち
2023年にTokyo Pride(*2024年までは、東京レインボープライド[Tokyo Rainbow Pride]の名称にて開催)に初参加し、2024年からはトップスポンサーとして先導的なポジションを築いているパナソニック コネクト。LGBTQ+を含む多様性の尊重を、企業の成長に欠かせない経営戦略の柱に据えるその想いと取り組みについて、執行役員 シニア・ヴァイス・プレジデントでチーフ・リーガル・オフィサー(CLO)リスクマネジメント担当兼DEI推進担当の玉田 豊さん、人事総務本部 DEI推進室の池松 奈穂さん、デザイン&マーケティング本部 コミュニケーション統括部 コーポレートブランディング部の太田 治子さんに聞いた。
取材・文/中村茉莉花 撮影/清原明音
“人権”と“競争力”、2つの軸を見据えるDEI施策
—玉田さんは2024年の10月にDEI推進担当に就任されたばかりですね。
玉田 豊さん(以下、玉田) 約3年前にパナソニック コネクトのCLOに就任しました。DEIに関して社長の樋口(泰行)が本気で取り組んでいて、メンバーたちも非常にパッションをもって関わっている姿が印象的でした。DEI推進担当の一員として、会社をよくし、従業員がいきいきと働くことができる組織づくりに、自分が少しでも貢献できたらと考えています。
—なぜパナソニック コネクトではDEIを「経営戦略の柱」として掲げているのでしょうか?
玉田 当社では、DEIを通じて「企業競争力の向上」と「人権の尊重」の2つの目的を実現しようとしています。前者は、多様な価値観や視点を取り入れることで、より強い組織になっていこうというもの。後者は、競争力という概念の大前提として、そもそも個人の尊厳は憲法で保障された基本的人権であり、それを守るのは当然という考えです。この両輪が、私たちのDEIの土台です。
—就任してから、何か印象的なエピソードはありましたか?
玉田 就任してすぐ、グループ内の別会社に勤めるLGBTQ+当事者の社員が、DEI活動の一環としてトークセッションに登壇してくれることになりました。肩肘の張った研修ではなく、誰でも気軽に参加しやすいセッションという形で社内に呼びかけたところ、リアルで30〜40人、オンラインでは100人近い社員が参加。当事者の生の声に接することで参加者のLGBTQ+に関する理解が深まったのを感じ、「知ること」の大切さを実感しました。こうしたタッチポイントを、今後も増やしていきたいと考えています。
また、DEI担当役員が全事業部門を年に1回訪問し、社員と直接対話する“DEIキャラバン”にも参加しました。普段あまり接点のない部署の従業員から、DEIや日常業務の悩みをテーマに率直な意見を直接聞くことができ、とても刺激的な経験でした。多様な背景をもつメンバーがどうしたらより働きやすくなるのか、どうしたらモチベーションを高められるかなど、現場ならではの気づきを多く知ることができました。“DEIキャラバン”で吸い上げた社員の声は、その場限りで終わらせずに経営会議で議論され、具体的なアクションにきちんとつなげる仕組みが整っています。こうしたプロセスを通じて、DEI活動を経営に取り込むという本気の姿勢が、現場にも伝わっていれば良いなと思っています。
見えにくい多様性だからこそ。アライの声を可視化する「ALLY1000活動」
—パナソニック コネクトは、Tokyo Pride に向けて、昨年から引き続き“ALLYからはじまる、ALLYからつながる”をテーマに掲げています。社内でアライを増やすための取り組みを教えてください。
池松奈穂さん(以下、池松) 2024年2月から、「ALLY1000活動」をスタートさせました。LGBTQ+に関する動画セミナーを視聴したうえで、アライとしてのメッセージを投稿してもらい、名前や部署・拠点名と一緒に社内サイトで公開しています。すでに409名 の社員が “ALLY宣言”をしてくれています。
LGBTQ+は、目に見えにくいダイバーシティとして、さまざまなマイノリティのなかでも、ある意味一番象徴的な存在なのではと感じます。身近に当事者がいると気づきにくい場合も多いからこそ、「この部署・拠点にこれだけ味方がいるよ」という支援の気持ちを表明していくことが安心感や信頼につながるのではないでしょうか。1000人を目指して社内でアライの輪をどんどん広めていけたらと思っています。
企業の枠を超えて。“レインボービジネスネットワーク”がつなぐ学びの輪
—社外とも連携を進めています。
池松 2024年2月に有志で「レインボービジネスネットワーク」をスタートし、企業間でLGBTQ+に関する知見を共有する場を設けています。有識者や当事者によるトークセッション、参加企業による事例の共有など、毎回100社以上から100名以上が集まる大規模な交流会に成長しています。こうした横のつながりを活かして、企業の枠を越えたムーブメントが社会全体の変化につながっていけばと願っています。
—「Pride Action30」というユニークな取り組みも話題ですね。
太田 治子さん(以下、太田) 「Pride Action30」はNPO法人プライドハウス東京と一緒に企画したコンテンツで、LGBTQ+当事者への理解と支援の第一歩として、「1日1アクション」を提案するものです。「『男らしい・女らしい』という言葉を使わないようにしてみる。」「恋人や配偶者を『パートナー』と呼んでみる。」など、誰でも取り組める30の行動を紹介しています。
日本の現状として、LGBTQ+に関して“無関心層”がすごく多いということが調査でも明らかになっています。「LGBTQ+の人々とどう向き合ったらいいかわからない」「知識はあるけれど何をしたらいいかわからない」という人たちに向け、“初めの一歩”のハードルを下げ、「やってみようかな」と行動を起こすきっかけを提供したいと思っています。
現在、15社の協賛を含む65社の企業様にご賛同いただいています。社内教育にも活用いただき、1人でも多くの人が働きやすい環境づくりを共に広げていきたいですね。自分のマイノリティ性を通じて“Same Life, Same Rights”を考える
—今年のTOKYO PRIDEのテーマは、“Same Life, Same Rights”です。このテーマに対する想い、そしてパレードへの意気込みをお願いします。
玉田 自分がマジョリティだと、マイノリティが抱える悩みにはなかなか気づけないものです。でも言葉が通じない外国に行った時のことなどを思い出すと、マイノリティが感じている居心地の悪さや辛さに思いをはせることができます。そのような自分のマイノリティ性を通じて“Same rights”という概念をひもといていくと、マイノリティの課題は、実はマジョリティの課題であることに気づかされます。“Same Life, Same Rights”を実現する社会に向け、これからもDEI推進の姿勢を社内外に発信していきたいですね。
池松 パレードにはパナソニックグループ全体で250名が参加予定で、そのうちパナソニック コネクトからは、社長の樋口をはじめ役員12名を含む175名が参加します。当日は多くの方と交流しながら、共に思いを広げていけたら嬉しいです!
太田 「Pride Action30」を体感していただくブースも企画しています。30のアクション等から1つ選び、自分に似たアバターと一緒に球状のスクリーンに投影して、SNSなどでシェアできる参加型のコンテンツを準備しています。一人でも多くの人を巻き込みながら、私たちのメッセージを浸透させていきたいと思います。





