株式会社セールスフォース・ジャパン
Salesforce Japan
サーベイで見えた実態と課題。Salesforceが目指すイクオリティとは

左からOffice of Equality Directorの蓮見勇太さん、Outforceの河津玲奈さん 、
Outforceエグゼクティブ・アドバイザーの鈴木祥子さん、森田青志さん
昨年、社内で初めてLGBTQ+に関するサーベイを実施したSalesforce Japan。データを重視する企業として、イクオリティの理念を社会に広げる取り組みを続けている。サーベイを通して見えてきた実態と今後の展望とは? Office of Equality Directorの蓮見勇太さんと、LGBTQ+当事者とアライを支援する社内グループ“Outforce Japan”のリーダーシップメンバー、河津玲奈さんに話を聞いた。
取材・文/中村茉莉花 撮影/清原明音
回答者の80%が「LGBTQ+の当事者にとって働きやすい会社」と回答
—LGBTQ+に関するサーベイを実施された背景を教えてください。
蓮見勇太(以下、蓮見) 当社の施策に関して、社外から「先進的な企業ですね」と評価いただくことも多いのですが、実際の社内の状況はどうなんだろう?という疑問が以前からありました。Salesforceはデータを重視する企業ですので、まずは実態を定性的・定量的に把握しようと考えたのがきっかけです。2024年春、全従業員を対象にサーベイを実施し、52%、約1,700名から回答を得ることができました。
従業員の声を可視化することで、今後の制度設計に活かし、また、イクオリティの理念をお客様や社会にも発信していきたいと考えています。
—サーベイを通してどのようなことが見えてきましたか。
蓮見 まず、「SalesforceはLGBTQ+の当事者にとって働きやすい会社だと思いますか?」という質問に対し、約80%から「はい」という回答がありました。多くの従業員が、性自認や性的指向にかかわらず働きやすい職場だと感じていることがうかがえます。また、LGBTQ+当事者の約55%が親しい同僚や仕事仲間にカミングアウトしているという結果も得られました。さらに、「あなたはLGBTQ+当事者従業員に理解のあるアライ(当事者の支援者)であると自認していますか?」という質問に対しては回答者の84%が「はい」と回答しています。
Salesforceでは、「信頼」「カスタマーサクセス」「イノベーション」「平等(イクオリティ)」「サスティナビリティ」の5つをコアバリューとして掲げていますが、そのうちのひとつである「平等(イクオリティ)」の浸透度がデータとして表れたと感じています。
一方で、「LGBTQ+のロールモデルやメンターがいる」と答えた回答者は約25%にとどまり、そのうち約9割が「ロールモデルは社外にいる」と回答。社内でのロールモデルやメンターの可視化が今後の課題だということも見えてきました。
“どんな背景を持つ人でも、成功して当たり前”。それがSalesforceのカルチャー
—LGBTQ+当事者の従業員が働きやすいと感じる背景には、どのような企業風土があるのでしょうか。
河津玲奈さん(以下、河津) 私が入社してすぐに感じたのが、従業員の一人ひとりのイクオリティに関する感度の高さです。個人の体験としては、入社初日にトレーニングをしてくれた従業員が自らの性的指向をオープンにしていて、組織内の心理的安全性の高さに驚かされました。私自身、ノンバイナリーで代名詞(Pronouns)はthey/themを使っていますが、Slackなど社内のやり取りでも皆きちんとthey/themを使ってくれる。前職ではありえなかった体験で、「ここでは自分でいていいんだ」と実感できます。「どんなバックグラウンドを持つ人でも成功して当たり前」という価値観が社内に浸透していると感じます。
—社内では具体的にどんな取り組みを行なっているのでしょうか。
河津 Salesforceには“Outforce”というイクオリティグループ(従業員リソースグループ)があり、グローバルで約1万人が参加しています。日本でもSlackに専用チャンネルがあり、「Outforceリーダーズと話したい」というワークフローを通じて、匿名でミーティングを申し込める仕組みも整えています。
同性パートナーとの住宅ローンの相談など、当事者から法的な質問を受けることもあり、そんなときは法律家やNPOなどの外部リソースにつなぐなど、安心して相談できる体制づくりに努めています。
蓮見 社内には、Outforce以外にも女性従業員やワーキングペアレンツを支援するイクオリティグループがあり、それぞれにSlackチャンネルがあります。Slack上でメンバーの参加状況やエンゲージメントをリアルタイムで可視化できるので、社内でのイクオリティの浸透度を可視化するツールとしてもSlackは有効ですね。
“東京レインボープライド2024”のパレードにて
“ありのままの自分”でいることをサポートする2つの制度
—制度面での取り組みについてはいかがでしょうか。
蓮見 大きく2つあります。ひとつは、「パートナーシップ制度」。婚姻関係に準じる関係性であれば性別にかかわらず、パートナーも福利厚生の対象としています。また、パートナーシップ合意契約や任意後見契約の締結にかかる公正証書作成費用も補助します。日本ではまだ婚姻の平等が実現していないなか、Salesforce Japan独自の制度として運用しています。
もうひとつは「ジェンダーインクルーシブベネフィット」。ジェンダーアファメーション(性自認の確認と肯定)をサポートする制度で、例えば性別適合手術などの医療処置に対する最大400万円までの経済支援や、身分証明書等の性別表記の変更など法的手続きの費用の補助があります。
そのほかにも、術後の回復のための有給休暇(最大4週間)、新しいワードローブ購入の補助、カウンセリングサービスなど様々な施策で、従業員がありのままでいられるよう、経済的・精神的に手厚くサポートしています。
イクオリティの理念を、エコシステム全体に広めていきたい
—社外への取り組みについてはいかがでしょうか。
蓮見 サーベイの自由回答では、「社外への発信を強化してほしい」「他組織との連携を進めて社会を変えてほしい」といった期待も寄せられました。
Salesforceは「ビジネスは社会を変えるための最高のプラットフォームである」をモットーに掲げており、自社の製品やサービスを通じた社会のイクオリティ推進という点も重視しています。例えば、我々の製品のひとつ“Slack”で表示される代名詞(Pronouns)の活用を促すことで、ジェンダーへの配慮を広めることもその一例です。
また、当社が運営する無料学習プラットフォーム“Trailhead”では、平等やマイクロアグレッションといったイクオリティに関するプログラムを無償で提供し、従業員やユーザー企業の皆様の意識向上にもつなげています。
—社内でのロールモデルやメンターの可視化という課題にはどう取り組んでいきますか?
蓮見 河津さんのような当事者のリーダーやアライ従業員の活躍を、社内外にもっと見える形で発信していきたいと思っています。当社が性的指向や性自認にかかわらず活躍できる会社であることを示していきたいですね。
—TOKYO PRIDEに向けた意気込みや、これからの展望を教えてください。
河津 今年は例年よりパワーアップしたブースを設けて、、TOKYO PRIDEに参加する予定です。私がSalesforceで自分のポテンシャルを出して働けているのも、やはり偽りのないありのままの自分でいられて、受け入れられていると感じるからこそ。誰もが働きやすいSalesforceのカルチャーを、TOKYO PRIDEでも感じていただけたらと思います。
蓮見 「インクルーシブな職場環境が、従業員のパフォーマンス向上にもつながる」ということは社内のデータでも証明されており、イクオリティはビジネスの成長においても不可欠なものです。バイアスのないAIツールを開発するためには、やはり社内のいろいろな人の声が反映されていること、バイアスがないことが重要です。これからも、イクオリティを体現したテクノロジーを通して、お客様やステイクホルダーのお役に立つのはもちろん、エコシステム全体を変える活動にも取り組んでいきたいですね。
“東京レインボープライド2024”のパレードにて





