【インタビュー企画】15年間、共に生きて。「自分らしくいられる場所」を見つけた二人の物語 #わたしたちの声 vol.1
Tokyo Pride 2025 Pride Festival インタビュー企画「#わたしたちの声」では、LGBTQ+の当事者やアライの声やリアルな体験談を記録し、発信することで、多様なセクシュアリティやジェンダーに対する理解と共感の輪を広げることを目的としています。
一組目は、共にして15年になるカップルの瓜本淳子さんと井上ひとみさんです。


(左:瓜本淳子さん、右:井上ひとみさん)
二人の出会いは?
二人の出会いは、ひとみさんが31歳の頃でした。当時はまだLGBTQへの偏見が強く、相談相手が見つからず苦しんでいたひとみさんが、mixiで同性愛者向けのコミュニティに「誰か話を聞いてほしい」と書き込んだことがきっかけです。淳子さんが「私でよければ」と応じたことで初めて居酒屋で対面し、その場でひとみさんは3時間も今までの悩みや苦悩について吐き出しました。
ひとみさんは小学校の頃から女の子の方が好きだと感じていました。高校3年生の時に、明確に女性が恋愛対象だと自覚するほど好きな人ができましたが、それが初恋でした。しかし、その頃は周囲の友達や学校での偏見が強く、テレビでは「保毛尾田保毛男(*1)」が流行するなど、とても人には相談できない状況でした。長年その苦しみを一人で抱え込んでいました。
ひとみさんは、「初対面なのに嫌な顔ひとつせず聞いてくれて、本当にいい人だなと思いました」と当時を振り返ります。その後、二人はそれぞれ別の相手との失恋を経験し、慰め合いのため訪れたビアンバーのママさんの「そこで付き合っちゃえばいいじゃない?」という一言をきっかけに、2011年に交際をスタートさせました。
(*1: 『保毛尾田保毛男(ほもおだほもお)』とは、1980年代後半〜90年代に放送されたバラエティ番組のコントに登場したキャラクター。ゲイの男性を強調して笑いのネタにする内容で、当時は人気を集めたが、2017年の特番で再登場した際に、「性的マイノリティ(LGBTQ+)を笑いの対象として差別的に扱っている」と批判が集中。放送局が公式に謝罪するなど、社会問題として議論になった。)

お互いの尊敬しているところは?
互いに尊敬する点について尋ねると、ひとみさんは淳子さんの「自分にはできないことを淡々とやってくれるところ」「文句一つも言わずに私のわがままを全部大きな心で許してくれる」と答えます。家事や経済観念など、真面目なひとが多いなかで、さらに真面目だという淳子さんのおかげで15年続いていると話します。一方、淳子さんは「堅物で融通効かない人に聞こえる」と笑いますが、その真面目さこそひとみさんにとって尊敬できるポイントなのです。
二人らしい瞬間を聞くと、ひとみさんは「雑貨店やホームセンター巡りが大好きで、3時間でも回ってしまう私に付き合ってくれること」と嬉しそうに話します。淳子さんも「私はDIYはそこまで好きじゃないけど、雑貨は好きだから」と控えめに付け加えました。


ギャップを感じるのは「頑固なところ」だとひとみさんは笑います。「淳は浮気は絶対に許さないタイプ。でも私は、もし淳が浮気したとしても、2度とやらないと約束できるなら、淳を失いたくないから許してしまうかも。そこはちょっと意見が分かれますね」。このやり取りに対して淳子さんは「信用できなくなってしまうね。そこは相手を大事にする仕方の違いかな。」と真剣な表情を見せました。
どういう社会に変わってほしい?
最後に、二人が望む社会の変化について尋ねました。「私たちは周囲にカミングアウトしていますが、まだ知らない人の前では手を繋いだり近づいたりするのが躊躇われます。誰もが堂々と自然に愛情表現ができる社会になってほしいです」とひとみさん。二人が築いた15年の絆は、そうした未来への希望にも繋がっています。
お二人は、Marriage For All Japan × Tokyo Pride 2025コラボにもご参加いただきました。
50組100名の法律上同性どうしのカップルとともに、ステージで同性婚法制化への願いを力強く発信しました。

【プロフィール】(参考:特定非営利活動法人カラフルブランケッツ)
井上ひとみ(いのうえ ひとみ):特定非営利活動法人カラフルブランケッツ理事長。高校3年生で自身がレズビアンと自覚しました。2011年より淳子さんと交際を開始し、2015年にレインボーフェスタ!で公開結婚式を挙げ、カミングアウトしました。その経験からLGBTQが身近に存在することを知ってもらうための活動を始めました。大阪市パートナーシップ宣誓証明制度第1号利用者。全国で講演を行い、同性婚巡回展「私たちだって“いいふうふ”になりたい展」を開催しています。
瓜本淳子(うりもと じゅんこ):特定非営利活動法人カラフルブランケッツ副理事長。同性愛に葛藤し、一度男性と結婚しましたが離婚しました。2011年からひとみさんと交際しています。同じ動物病院に勤務するパートナーであり、働きながら心理学を大学で学び、メンタルケア資格取得を目指しています。
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