ありのままを愛せる自分になろう。ユース世代が集い、新しい未来を描く『Youth Pride(ユースプライド)』開催レポート【後編】
Tokyo Pride 2025の一環として、「ありのままを愛そう」をコンセプトに、2025年6月14日(土)、15日(日)の2日間にわたって開催された『Youth Pride(ユースプライド)』。
イベントレポート後編では、2日目の様子をお届けします。「学ぶ」「働く」「遊ぶ」「暮らす」というユース世代にとって大切な4つのテーマを軸に、より生きやすく、より楽しくなる情報発信や交流が行われました。
2日目の総合司会は、SNS総フォロワー数650万人を超える人気クリエイターで結成されたクリエイターユニット・午前0時のプリンセス【ぜろぷり】の4人と、YouthProject代表・中島幸乃です。
この日は、「遊ぶ」「暮らす」がテーマ。「ありのままの自分を取り戻せる時間を、一緒に過ごしましょう!」という総合司会からの言葉とともにスタートしました。

LGBTQ+の人生設計―暮らし・家庭・子育て
【登壇者(敬称略)】
ふたりぱぱ(みっつん/リカ) 俳優・YouTuber/研究者
はぴLIFEチャンネル YouTuber
はじめは、「暮らす」をテーマにしたセッションです。LGBTQ+ユース世代が抱く「将来に対する漠然とした不安」を、ロールモデルを通じて払拭することを目的に、家庭を持つ先輩LGBTQ+が、生活・家庭構築・子育てに関する実体験や制度を紹介しました。

スウェーデン在住のふたりぱぱ・みっつんさんとリカさんは、日本人とスウェーデン人の男性カップル。9歳の男の子を育てています。そして、女性同士のカップル・ぽっちさんとみち子さんも、男の子の子育て中。
今の社会で同性カップルが子どもをもつのは、まだまだ勇気がいること。その中で、子どもを迎えようと思ったきっかけを「甥や姪ができたり、ロンドンに転勤をして、子育てしている同性カップルを目の当たりすることが多くなり、可能性あるかもねとイメージがつくようになりました。」と、みっつんさんはいいます。リカさんの勤務先が同性カップルへの育休適用などLGBTQ+への取り組みが整っていたことも、2人の背中を押してくれました。

ぽっちさんは「ずっと昔から家庭を築きたい・子供が欲しいと思っていた。相手が女性だから特にその意思に変わりはなかった」と語りました。みち子さんは「自分は高校生の時に女性が好きだと気づいて、家庭を持つ・子供を産むことは考えられなかったけれど、子どもがほしいと純粋に思っていたぽっちに後押しされた」と語ります。ぽっちさんは、自分の可能性を狭めず、どうすれば自分たちが子どもをもてるかを調べ尽くしたそうです。そして2024年、男の子が誕生。
子どもが通う保育園では、同性カップルの子どもが入園するのは初めてでしたが、先生方はとても協力的で、園でわからない手続きなどがあれば相談してくれるそう。ただ、戸籍上ではみち子さんの子となっているため、「自分ができない手続きもあり、壁を感じることがある」、とぽっちさん。

このセッションでは、来場者から質問が寄せられました。ご自身が代理母出産で生まれたという方からは、ふたりぱぱに「代理母出産であることを、子どもにいつ伝えるか?」という質問がありました。
みっつんさんとリカさんは、すでに子どもに伝えているとのこと。「男性カップルなので、子どもが生まれた経緯を隠すことはできない。クリニックのセラピストから『子どもの成長に合わせて、理解できることを徐々に伝えていけばいい』とアドバイスをもらい、とても気が楽になったんです。子どもが4歳の時に、代理母が妊娠中に作ってくれたアルバムを見せ、代理母本人に会いにいきました」と、みっつんさん。
「同性とカップルになり、子どもをもつことを自分の親にどう伝えたか」という質問に対しては、みち子さんが回答。「親は、ぽっちを仲のいい友達だと思っていたようですが、酔った勢いでカップルだと伝えました(笑)。子どものことは、私が妊娠してから言いましたね。不妊治療をしていて、子どもができない可能性もあったので」。
みっつんさんは、リカさんのロンドン転勤について行く時に、親にカミングアウトしたそうです。「言うべきタイミングが来たと思ったものの伝えられず、親に手紙を書きました」と、当時を振り返ります。その1年半後にはリカさんと一緒に帰省し、子どもは生まれた後で連れて行ったそう。両親は、孫を可愛がってくれているといいます。
最後に「日本は制度が整っていないことが多く苦労するが、子どもがほしいと思うなら、その気持ちを諦めないでほしい」と、ぽっちさんからメッセージが送られました。
「PERSONAL STYLE SHOW 2025」 by GIVENCHY BEAUTY & ZOZO
~「なりたい自分」を叶えるメイクデモとスタイリングショー~
【登壇者(敬称略)】
Zutti Mattia 美容クリエイター
ここからのテーマは「遊ぶ」。次は、誰もが「なりたい自分」を表現する最初の一歩を応援するセッションです。自分らしさを表すファッションやメイクに悩む3人のLGBTQ+ユースがモデルになり、メイクデモンストレーション、そしてパーソナルスタイリングをお披露目します。
モデルとなったのは、YouthProjectメンバー・みれい、しょう、たかせ。しょうは、「性別をもたないセクシュアリティである自分は、服装や髪型にずっと悩んできた。自分に似合うメイクや洋服を知り、新しい自分に出会いたい」と参加を決めた理由を話します。
「自分が好きな男性アイドルに近づけながらも、可愛くなりすぎないバランスを知りたい」と、たかせ。みれいも「表現したい自分の姿と、似合うメイクや服装を掛け合わせたら、どんな自分になれるのだろう」とワクワクが止まりません。

ステージ上で、プロの手によって輝きを増す3人。みれいを担当したビューティーコンサルタントは、「スモーキーなアイメイクに挑戦します。アイライナーをしっかり入れてブラシでぼかし、アイシャドウを上からかぶせると簡単に仕上げられます」と、ポイントを解説。下まぶたにもアイシャドウを入れ、目頭にハイライトを入れると、都会的で洗練された雰囲気に!

しょうのメイクは、「心が七色に変わっていくことを表現する」がテーマ。アイメイクにはいくつもの色を取り入れてカラフルに。ベースメイクは、ジバンシイのフェイスカラーで透明感をつくり、ファンデーションを重ね、パウダーできめ細かい肌に仕上げました。さらにシャドウ、ハイライト、チークを入れて完成です。

キュートなメンズメイクに挑戦した、たかせ。涙袋をチャームポイントにし、マットなアイシャドウを塗った後でラメを置きました。

メイクが完成した後は、ファッションです。3人は事前にスタイリングサービスを受け、すでにケープの中に洋服を着ています。そのファッションを一斉にお披露目!
たかせのファッションは、フリルで顔周りに華やかさを加えたうえで、Aラインのスカートとパンツで、オーバーサイズのジャケットとのバランスを取っています。

上半身をカバーできるスタイリングを希望した、しょう。シャツとジレ、ネクタイを組み合わせて「かっこよさ×きれい」を演出。本人の希望でブルーを多く取り入れ、柄をワンポイントで入れて個性を引き出しました。

みれいが望んだのは、個性的でメリハリのあるシルエットのファッション。ヴィンテージライクなニット、パールのハーネスやレザースカートを合わせた、上級編の着こなしです。

「スカートで性別を決めつけられた経験があり、取り入れづらいと感じていた。でも、スカートもはきたい。その時に、こういう着こなしができるんだと新たな発見があった」と、しょうはいいます。誰もがありたい自分を表現し、かつ似合うメイクとスタイリングに挑戦できる可能性を感じる時間でした。
次に美容クリエイターのZutti Mattiaさんが登場し、ぜろぷりのmomohahaさん、聖秋流さんも交えて「なりたい自分」をテーマにトークセッションを行いました。ジェンダーレスを公言しているZuttiさんが、自分を表現するファッションを考える方法は「曲」だそう。「その日の気分で曲を選んで、それを聴きながらなりたい自分をイメージする。今日のファッションのテーマは、レディー・ガガさん」と語ります。

とはいえ、「自分らしさ」を考えるのは難しいもの。まずは「自分らしさを考える時間をもつことが大切」と、momohahaさん。「自分らしさの唯一絶対の定義はなく、悩み続けることも貴重な経験」と、momohahaさん、聖秋流さん、Zuttiさんさんは考えています。自分らしさを探すこと自体を楽しみ、マイノリティでもありたい自分に近づくことを諦めずに生きていこう、という気持ちを会場全体で共有しました。

Youth Pride 成人式 in collaboration with keuzes
【登壇者(敬称略)】
午前0時のプリンセス【ぜろぷり】 クリエイターユニット
2すとりーと 新宿二丁目発ゲイYouTuber
高橋アラン モデル / インフルエンサー
『Youth Pride』のフィナーレを飾るのは、「Youth Pride 成人式 in collaboration with keuzes」です。「生き方や在りたい姿について一切の諦めや妥協をせず、思うがままに生きられる」という願いを叶えるアパレルブランド「keuzes(クーゼス)」と共同で開催します。
はじめに、総合司会の中島幸乃から、開式の挨拶がありました。
「この式は、いわゆる“成人式”ではありません。20歳の門出を祝うものでもなければ、年齢や制度で誰かを区切るものでもありません。ここで開催するのは、皆さんのありたい姿を皆さん自身が祝う式です」
ぜろぷりの4人、ゲストである2すとりーとの2人、高橋アランさんからも、成人式に参加する皆さんに温かい「祝辞」が伝えられました。

『Youth Pride』の来場者は、自分らしさに人一倍向き合い、悩んできた人が多いはず。だからこそ、この成人式では「ありのまま記念日」をコンセプトに、自分自身を祝います。
YouthProjectメンバー・じゅりなは、参加者を代表し「これまでの人生は、ありたい自分より、学校や社会の“常識や模範”に合わせてきた。これからは、ありのままの自分を表現し、周囲と尊重し合っていきたい」と、成人式に向けた思いを語りました。

成人式の舞台は、ファッションショーへと移ります。ゲストの皆さんと参加者が、それぞれの「自分らしい」ファッションに身を包み、ランウェイを進みます。


誰ひとり、同じファッションの人はいません。流行に踊らされているわけでもありません。今の自分が思う「自分らしさ」を表現するファッションでランウェイを進む姿に、無限の可能性を感じるファッションショーとなりました。
熱気あふれる会場では、次にトークショーを実施。ぜろぷりさん、2すとりーとさん、高橋アランさんが「自分のアイデンティティとどう向き合うか」を語りました。

学校や仕事では、暗黙の了解になっている「常識」が多く存在します。LGBTQ+当事者は、その「常識」が壁となり、生きづらさを感じた経験があるはず。
2ストリート・たつやさんは、「男らしさ」に苦しんだ過去を語ります。「男らしくしなければならない」と周囲の期待に応える行動をしてきたものの、ふと「誰の理想のために生きてるんだろう?」と感じたそう。自分が自分に「常識」を押し付けていたことに気付いてからは、ありのままの自分を大切にしています。子ども時代から父親と自分の「当たり前」が違うことに苦しんできた、ぜろぷり・聖秋流さんは、大人になった今、「自分の常識を相手に押し付けない」ようにしているとのこと。
「自分らしくあり続けるための支え」についても、トークが繰り広げられました。高橋アランさんは「自分が好きなことを発信していると、同じ感覚をもつ人が自然と集まってくる。その“心の会話”ができる人たちが支え」といいます。ぜろぷり・momohahaさんは、「ファンが支え」。コンプレックスだらけの自分を変えてくれたのは、SNS発信への反応。温かいコメントが心の支えになり、自分を好きでいられるようになった、と感謝の気持ちにあふれます。
最後に、登壇者から参加者へ、前向きな言葉がプレゼントされました。
「みんながありのままでいられるよう、たくさん発信活動をしていきたい」(ぜろぷり・アイミさん)
「人生は選択肢だらけ。ワクワクするほうを選ぶと、自分らしさに近づいていく」(ぜろぷり・JESSICAさん)
「人生の主人公は、自分。それさえ心にあれば、ハッピーに生きていける」(2ストリート・ゆうきさん)
すべてのセッション終了後は、参加者の大交流会を開催! YouthProjectメンバーが企画した各種ゲームブース、トークスペースなどが用意され、参加者はそれぞれ、興味のある場所へ移動。ここにしかないつながりが多く生まれる時間になりました。
こうして、2日間にわたって盛り上がった『Youth Pride』。「ありのままの自分を大切に、また来年ここでお会いしましょう」と、総合司会の中島幸乃から感謝の言葉を伝え、幕を閉じました。
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