NPO法人にじいろかぞく presented by 日興アセットマネジメント株式会社
Nijiiro Kazoku presented by Nikko Asset Management Co., Ltd.
お互いの思いを尊重し合える最高のコラボレーション。LGBTQ+ファミリーの日常を伝える写真展を開催
Tokyo Pride 2025 Pride Parade & Festivalでは、企業とNPO・当事者団体が連携・協働をし、さまざまな課題の解決や目標を実現することを推奨する目的で、「企業 × NPO・非営利当事者団体 セクター間コラボレーション出展ブース」を設けた。
そのうちの一つが、「NPO法人にじいろかぞく presented by 日興アセットマネジメント株式会社」だ。「子育てをする・したいLGBTQ+と、その周辺をゆるやかにつなぐ」をコンセプトに活動する「にじいろかぞく」が、「にじいろかぞく写真展」を開催。そのブース運営を、日興アセットマネジメントのメンバーが全面バックアップした。
数ある企業やNPOの中から、両者はなぜコラボレーションしようと考えたのか。コラボレーション出展ブースや、当日までの準備はどのような様子だったか。そして、双方が感じたこととは。NPO法人にじいろかぞく 共同代表理事の青山 真侑さん、日興アセットマネジメント株式会社 運用企画部 企画統括グループの劉 鋭さん、人事部 の林 奈奈さん(共に、LGBTQグループ共同リード)、コーポレート・サステナビリティ部の髙野 美和さんに話を聞いた。
日興アセットマネジメント株式会社 運用企画部 企画統括グループ 劉 鋭さん (ジャパンLGBTQグループ共同リード)(写真・左)
日興アセットマネジメント株式会社 人事部 林 奈奈さん (ジャパンLGBTQグループ共同リード)(写真・右)
日興アセットマネジメント株式会社 コーポレート・サステナビリティ部 髙野 美和さん
NPO法人にじいろかぞく 共同代表理事 青山 真侑さん(写真・中)
*2025年9月1日、日興アセットマネジメントは、アモーヴァ・アセットマネジメント株式会社へ社名変更します。
聞き手・文/御代 貴子
写真/清原 明音
これまで大切にしてきた思いを、コラボ企画でも継続できる安心感があった
――はじめに、日興アセットマネジメントにおけるDEIの取り組みと、にじいろかぞくの活動内容を教えてください。
林奈奈さん(以下、林) 日興アセットマネジメントには、LGBTQ+、女性のエンパワーメント、人種平等、障がい者、環境などに関する、社員主導のサステナビリティ・グループが全世界で11あり、社員の15%強が活動しています。
そのうちの一つであるジャパンLGBTQグループは「LGBTQの理解を増やし当事者にとっても居心地のよい職場環境を目指す。社員が多様性について知るだけでなく、自分事にする風土を作る。」をテーマに掲げ活動しています。これまでに、2020年に婚姻の平等サポート宣言、2024年3月の「日興AMアライネットワーク」のグローバルな立ち上げなど、LGBTQ+当事者とアライへの支援を続けています。
青山真侑さん(以下、青山) にじいろかぞくは、子育てをしている・したいLGBTQ+当事者と、その周辺をゆるやかにつなぐNPO法人です。当事者どうしの交流会や全国各地のプライドイベントへの出展のほか、社会啓発活動として外部で講演などをしています。
―― 今回、企業 × NPO・非営利当事者団体のコラボレーション企画に参加した背景には、どのような思いがあったのでしょうか。
劉鋭さん(以下、劉) 日興アセットマネジメントは2017年からTokyo Prideに参加し、今回が初めてのコラボ出展でした。
これまでの取り組みは社内向けの勉強会やセミナーが中心で、社外とのコラボレーションや社会貢献の機会はあまりなかったので、今回のコラボ企画を通して社員が社外のコミュニティやアライの方々と直接交流する機会を設けたいと考えました。
青山 にじいろかぞくも、長きにわたりTokyo Prideに参加しています。以前は特定非営利活動法人 東京レインボープライドから委託され、子ども連れの来場者が立ち寄るための「おやこ休憩所」をイベント会場内で運営していました。
私たちも、今年が初めてのコラボ出展です。にじいろかぞくは、今年で活動16年目を迎えます。当初は、全国各地に暮らす自分と同じようなファミリーと出会える場として「子育てをする・したいLGBTQ+当事者同士」が安心して集まることのできるサークルのような、いわば「内向き」の活動を中心に行っていました。
長年活動していく中で、LGBTQ+カップルのパートナーシップ制度を設ける自治体が少しずつ増え、「LGBTQ+が子どもを持つ」ということも少しずつ認知が拡がりつつあります。スタッフや、つながりのあるLGBTQ+ファミリーの子どもたちもどんどん成長し、成人する子もいます。そうした変化の中で「全国各地に、様々なかたちで子どもを育てているLGBTQ+のファミリーがいる」ということをもっと可視化して、みんなの生きやすさに繋げていこう、という思いから、ブース出展の仕方が変化していきました。
青山 私たちの子どもが大人になるまでの間に、にじいろかぞくは何を達成しておくべきだろうと考えてみたとき、今回のような、企業をはじめとする外の世界とのつながりが、LGBTQ+ファミリー、そしてそこで育つ子どもたちが社会に出ていく過程で大切な段階だ、と思ったのです。
そこで当団体は今年、任意団体からNPO法人化し、外部ともコラボレーションしていく方針を立てました。Tokyo Pride 2025でのコラボ企画は、その第一弾となります。
――数ある企業・NPOの中から、なぜお互いを選びましたか。
髙野美和さん 初対面で青山さんの気さくな人柄に触れ、LGBTQ+ファミリーの現状についても率直に話してくれたことが印象的だったからです。DEIに携わっている私自身でさえ知らなかったことが多く、当社の社員にもこの学びを還元したいと思いました。
青山 私たちとしては、「にじいろかぞくの運営方針や雰囲気をなるべく変えずにブースを出展しましょう」と言ってもらえたことが、安心材料になりました。
Tokyo Prideの規模が大きくなるにつれ、美しく整った装飾をするブースが増えていますが、にじいろかぞくは、出展するブースを「整えすぎない」ように心がけています。ブース入口に掲げる看板はあえて手書きにし、バザーのような雰囲気にしています。それは、子育てをしている・したいLGBTQ+当事者の誰もが気軽に立ち寄れる場所、「ここにいていいんだ」と、いつも変わらず安心できる居場所でありたいという思いがあるからです。
日興アセットマネジメントは、こうした「今までのスタンスを守りたい」という私たちの気持ちを尊重してくれたのです。
Tokyo Pride前に社内セミナーを開催。LGBTQ+ファミリーへの理解を深めたうえで当日を迎えた
――Tokyo Pride2025 Pride Parade & Festival(プライドパレード & フェスティバル)が行われる前に、日興アセットマネジメントで社内セミナーを開いたと伺いました。そのきっかけや内容を教えてください。
劉 Pride Parade & Festivalの1週間前に、プライド月間の社員向けイベントとして開催しました。ブース出展前に、にじいろかぞくの取り組みを社員に知ってもらう場を設けたいと考えたのです。
セミナーはランチタイムに、青山さんと、同じくにじいろかぞく共同代表理事の小野春さんの対談形式で開催しました。お二人それぞれのご家族の歩みや、LGBTQ+ファミリーの多様性、個人としての思いなどをお話しいただいたのです。
青山 LGBTQ+ファミリーのなりたちはとても多様で、ファミリーごとに大切なストーリーがあります。だからこそ「LGBTファミリーとは、こういうもの」というように、「主語を大きくしない」ことが大切だと思い、小野と私それぞれが自分自身の話をさせていただきました。参加された方にとって、身近な同僚が当事者である可能性があることを考えるきっかけになればと思っています。
林 印象に残っているのは、LGBTQ+当事者が職場でカミングアウトせずに働き続けることの苦しさのお話です。青山さんは、「幼少期から嘘をつき続けるのが当たり前だった人は、精神的な苦しさがある状態が『普通』になってしまう」とおっしゃっていましたね。自分でも、その苦しさに気づかない、と。
青山 そうなんです。私の場合は、大企業に入社してから、ありのままの自分を隠すようになり、いつのまにかそれに慣れてしまって「そういうものだ」としか感じなくなっていたんですよね。40代でカミングアウトした後、「会社にいても、こんなに軽やかな気持ちで過ごせるのか」と驚きました。
林 同僚に隠しごとをするエネルギーを使わなくなるので、おのずと働きやすくなりますよね。そのエネルギーを、仕事に思う存分使えるようになると思います。企業にとっても、能力を発揮して活躍する人材が増えることは、大きなメリットです。
劉 そのためには、周囲にアライ(性的マイノリティを理解し、支援する人)がいること、そしてアライ自身が目に見える形で「アライであること」を表示するのも大切な要素だと感じました。私自身、当事者として共感することが多くあったセミナーでしたし、グローバルで立ち上がった「日興AMアライネットワーク」をさらに推進していきたいと思います。
お互いの交流をさらに深め、自分らしい人生を生きる力になり合いたい
――Tokyo Pride2025 Pride Parade & Festival当日の、コラボブースの様子を教えてください。
青山 にじいろかぞくのブースでの常設である「かぞく写真展」をメイン企画に、日興アセットマネジメントのDEIの取り組みもパネルで紹介しました。多様なファミリーやカップル、個人が安心して足を運べる場にしたいという思いが叶えられたブース出展となりました。
日興アセットマネジメントの皆さんには、私たちの思いを最大限に尊重いただくとともに、設営や当日運営、そして費用面でも大いにサポートしてもらったことに感謝しています。
林 展示されている写真にあった、LGBTQ+ファミリーやサポートする皆さんの幸せそうな笑顔が印象に残っています。私まで幸せな気持ちになれました。青山さんがおっしゃっていた通りの温かい雰囲気のブースで、誰もが自分らしく暮らせる社会について考えるきっかけになる展示だったと思います。
―― 最後に、今後に向けての思いをお聞かせください。
青山 日興アセットマネジメントとはさまざまな活動をご一緒したいと思っていますし、さらに他の企業や団体とのコラボレーションも模索していきたいと考えています。
プライドイベントのブース出展については、パネルに英語表記を入れるべきだったというのが反省点です。外国人の来場者も年々増えているので、今後は多言語対応も行い、より多くの方々にメッセージが届くようにしていきたいです。
劉 社内セミナーの参加者から「もっと詳しく話を聞きたい」という感想があがっているので、にじいろかぞくの皆さんと協力して二回目のセミナーも考えていきたいと思っています。
そして、にじいろかぞくのオフ会やボランティア活動などにも参加し、LGBTQ+ファミリーの方々とつながりをもちたいですね。これから出会う方々と、お互いがお互いの力になっていければと思っています。





