三井住友トラストグループ株式会社
Sumitomo Mitsui Trust Group, Inc.
誰もが自分らしく暮らせる社会へ。三井住友トラストグループのDE&Iの取り組み
-地域コミュニティから不動産の現場まで-
キャプション:左から三井住友信託銀行 人事部 DE&I推進室 太田千裕さん、三井住友信託銀行 町田支店・相模大野支店 金子美桜さん、三井住友信託銀行 渋谷・渋谷中央支店 内藤茉優さん、三井住友トラスト不動産投資顧問 投資部 山下麻里さん(※各所属は取材時点のもの)
三井住友トラストグループを中心として、 LGBTQに関するダイバーシティ・マネジメントの促進と定着を支援する一般社団法人wwP(work with Pride)が運営する「PRIDE指標」に取り組んでいる。2024年は、三井住友トラストグループの10社(※1)が、昨年に続き「ゴールド」を受賞したほか、三井住友信託銀行および日興アセットマネジメント(※2)は自治体・NPO/NGOなどとのセクターを超えた取り組みを推進する企業・団体への評価指標「レインボー」も同時受賞した。
今回は、グループ全体のDE&I推進の取り組みの現状と、渋谷支店、町田支店で広がる「レインボーミーティング」、そして不動産投資の現場における同性カップルへの向き合い方という具体的な事例についてお話を伺った。
(※1) 三井住友トラストグループ株式会社、三井住友信託銀行株式会社、三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社、日興アセットマネジメント株式会社(※2)、
三井住友トラスト・ビジネスサービス株式会社、三井住友トラスト・カード株式会社(※3)、三井住友トラストクラブ株式会社(※3)、三井住友トラスト・パナソニックファイナンス株式会社、株式会社日本カストディ銀行、三井住友トラスト総合サービス株式会社
(※2) 2025年9月1日付で日興アセットマネジメント株式会社はアモーヴァ・アセットマネジメント株式会社に社名変更します。
(※3)2025年10月1日付で三井住友トラスト・カード株式会社と三井住友トラストクラブ株式会社の両社を合併予定です。
【登壇者】
三井住友信託銀行 人事部 DE&I推進室 太田千裕さん
三井住友信託銀行 町田支店・相模大野支店 金子美桜さん
三井住友信託銀行 渋谷・渋谷中央支店 内藤 茉優 さん
三井住友トラスト不動産投資顧問 投資部 山下麻里さん
聞き手/髙松孟晋 撮影/清原明音
アライを増やし、誰もが安心して働ける職場環境へ
ー三井住友トラストグループのDE&Iの取り組みについて教えてください。
太田千裕さん(以下、太田) DE&I推進室では、LGBTQへの理解促進を重点項目のひとつとして掲げております。具体的には研修やTokyo Prideをはじめとした団体への協賛、イベントへの参加を通して社内のアライを増やすべく取り組みを続けています。これらの活動を通じて、誰もが安心して働ける職場になっていくことを目指しています。これまでは座学中心の研修が多かったのですが、昨年度は他社さまの事例も参考にして、例えばLGBTQ当事者の方と直接対話する機会を設けるなど、より実践的な内容にアップデートしています。
社員向けには、福利厚生のヘルスケアサービス内で、トランスジェンダーの方が治療に利用できるクーポンも提供しています。
渋谷から町田へ共感の輪を広げる「レインボーミーティング」
ー渋谷支店から始まったユニークな取り組みである「レインボーミーティング」について教えてください。
内藤茉優 さん(以下、内藤) レインボーミーティングは、渋谷を拠点に活動する企業や行政などさまざまなステークホルダーが集まり、LGBTQのアライを増やすことをテーマとしたコミュニティとして、フラットな関係のもとで社会課題解決に取り組み、コレクティブインパクト(※)を生み出すための集まりです。2022年から始まって、これまでに7回ほど開催いたしました。
(※異なる立場の組織や個人が連携し、共通の目的や社会問題を解決するために協力し合うこと)
具体的には参加企業・団体の取り組み事例を共有したり、取り組みについての疑問を話し合ったりしています。また、講師をお呼びして勉強会のような形をとることもあります。これまでもさまざまな業界の方にご登壇いただきながら知識を深めてまいりました。
ー町田支店でも同様にレインボーミーティングを開始したそうですが、その経緯を教えてください。
金子美桜さん(以下、金子) 町田支店として渋谷レインボーミーティングに参加し、このような素晴らしい取り組みがあるのだと感銘を受けました。私が担当する町田地域にもこの取り組みを広げたいと考えたのがきっかけです。
町田市役所と共に活動をしていますが、渋谷と比較すると、「アライ」という言葉や概念をもっともっと広く知っていただく潜在余地があると感じており、取り組みがいがあります。これまでに5回ミーティングを開催したのですが、最初の1、2回は、LGBTQやアライに関する基本的な知識を学ぶ場として開催し、企業での取り組みを共有しました。3回目からは具体的な活動に挑戦しようとディスカッションをはじめ、6月のプライド月間に向けて具体的なアクションプランを策定中です。
ー町田ならではの取り組みとして、どのようなものを計画されていますか。
金子 町田地域はさまざまなスポーツチームがあり、試合会場にLGBTQやアライに関するブース出展を予定しています。また、行政と協力して町田地域全体をレインボーカラーで彩る計画を進めています。参加企業の店舗にレインボーフラッグを掲げてもらうなど、現在構想を練っているところです。多くの人の目に触れる場で発信や情報提供をしようと、町田地域の行政、企業、団体が一体となって取り組みを考えています。
不動産業界にも広がる変化の兆し。
ー三井住友トラスト不動産投資顧問の”小さな”一歩ー
ーグループ各社でも、それぞれがお取り組みを行っているのですよね。
太田 はい。各グループ会社が企画し、トランスジェンダー当事者を招いたイベントや研修、LGBTQをテーマにした映画上映会に監督をお招きするなど、各社において活動を展開しています。Tokyo Prideへの参加などを通じて、グループ各社のLGBTQにおける理解促進やアライ表明のきっかけ作りを進めていきたいと考えています。
今回は三井住友トラスト不動産投資顧問の山下さんのエピソードをご紹介できればと思います。
山下麻里さん(以下、山下) 三井住友トラスト不動産投資顧問では、投資家の皆様から資金をお預かりし、ファンドを組成して不動産を取得・運用するアセットマネジメント(AM)業務を主に行っています。取得物件の実際の管理運営や入居者さまとの接点となる窓口業務は、プロパティマネジメント(PM)会社に依頼しています。
ある日、PM会社に同性同士と思われる入居申し込みがあったようで、私のところへ「いかがいたしますか?」という質問が届きました。基本的にPM会社はAMの意向に沿うことが多く、不動産業界では、こうしたケースに対する明確な基準がなく、最終的には物件オーナーさまの判断に委ねられるのが一般的です。
一部のケースでは、個人のオーナーさまのご理解が十分でない場合もあり、入居をお断りされることがあるのが現状です。そのため、PM会社としても『お断りすることも可能ですが、いかがいたしましょうか?』というニュアンスで相談してきたのだと思います。
しかし、現在の社会における多様性尊重の流れや、私自身の考えもあり、PM会社と話し合い、仮に同性カップルの方でも異性カップルと同様に受け入れるという結論に至ったという事例があります。これは弊社での一つのエピソードにすぎませんが、多くの不動産関連会社がオーナーさまに働きかけるなどし、このような制限を設けず、誰もが分け隔てなく住まいを選べるようになれば、業界全体の理解もより進んでいくのではないかと考えています。
ー都内でも同性同士の入居は、大家さんが嫌がる場合があるという話をよく耳にします。
山下 10年前までは、同性カップルで住宅を購入したくてもハードルが高かったと振り返ります。例えば、男女カップルであればペアローンで住宅ローンを組める場合があるのに対し、同性カップルではそれが難しかったり、当時はパートナーシップを証明する公的な書類も少なかったり、といった状況がありました。賃貸の場合も、現在よりオーナーさまの受入体制が整っていなかったように思います。現在はパートナーシップ証明書もありますが、特に賃貸の場合は、オーナーさまの理解があれば、必ずしもパートナーシップ証明書などを求めないケースも出てきており、少しずつ同性同士での住まいの選択の自由が広がっています。
太田 山下さんのように、実際に現場で業務をしながらさまざまな事に気づき、何かできないかと考えている社員がいます。経営層からのトップダウンだけでなく、各グループ会社の社員一人ひとりが主体的に考え、行動を起こせることが、私たちの大きな強みだと感じています。
「気づき」を力に、現場から動かす。
ー今後の取り組みについてお聞かせください。
太田 引き続きグループとして取り組みを継続していく方針に変わりはありません。一時的な盛り上がりよりも、地道に継続していくことが重要だと考えています。活動を通じて、社員や当社に関わる全ての方々が、少しでも働きやすさや生きやすさを感じられる場面が増えるように取り組んでまいります。
また、今回ご紹介した山下さんのような不動産現場での取り組みは、三井住友トラストグループ内で毎年実施しているインクルージョンに関する活動を表彰する制度に応募があり、グループ内で表彰・周知をするに至りました。各社で社員が主体的に一歩踏み込んだ取り組みを行い、それをシェアすることで、少しずつ良い流れを生み出していくことができています。
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三井住友トラストグループのDE&I推進は、経営層のみならず各社のメンバーの「自分ごと」として捉える主体性に支えられている。現場の社員が直面した課題から生まれた「小さな」行動が、グループ全体の「大きな強み」へと繋がっていく。





