PwC Japanグループ×まるっとインクルーシブ病院の実装プロジェクト
PwC Japan Group×Marutto Inclusive Hospiral Implementation Project
誰もが安心して、自分らしく健診・医療を受けられる社会を目指して

Tokyo Pride 2026 Pride Parade & Festivalでは、企業とNPO・当事者団体が連携・協働をし、さまざまな課題の解決や目標を実現することを推奨する目的で、「企業 × NPO・非営利当事者団体 セクター間コラボレーション出展ブース」を設けた。その一つが、会計・監査、税務、コンサルティング、ディールアドバイザリー、法務など幅広い領域でプロフェッショナルサービスを提供するPwC Japanグループ(以下、PwC Japan)と、医療現場の変革を目指す有志団体「まるっとインクルーシブ病院の実装プロジェクト(以下、まるクル)」によるコラボレーションブースだ。
一見、接点のなさそうなPwC Japanと医療現場にアプローチする有志団体のまるクルがなぜ手を取り合ったのか。背景をたどると、PwC Japanのあるメンバーからの、インクルーシブな健診を求める声が出発点となっていた。今回のコラボレーションを推進したPwC Japanの清見嘉子さん、山内美和さん、まるクルの金 弘子さん、麻生 佳織さん、中根 珠美さん、後藤 徹平さんの6名に、取り組みの詳細と未来への展望を伺った。
聞き手・文/御代 貴子 写真/清原 明音
メンバーの声から始まった、健診のインクルージョン
――まず、それぞれの組織の活動内容についてご紹介をお願いいたします。
清見:PwCは世界137の国と地域にメンバーファームを有するプロフェッショナルサービスファームのネットワークで、「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する」をパーパス(存在意義)としています。その中で、日本に拠点を置くPwC Japanでは、監査、コンサルティング、税務、法務、M&Aアドバイザリーなど多様な専門性を結集し、クライアントの課題解決を支援しています。
その土台となるのが、インクルージョン&ダイバーシティです。LGBT+インクルージョンにおいては、事実婚・同性婚への結婚祝金の支給や、医療上の事由に利用できるメディカル休暇に性別適合手術も含むなど、背景によらず一人ひとりが安心して本来の力を発揮できる環境づくりを推進しています。

金:まるっとインクルーシブ病院の実装プロジェクトは、誰もが安心して過ごせる診療所や病院づくりに取り組む有志団体です。2020年に発足し、医師や看護師、医療事務、介護士だけでなく、非医療従事者も含めた多様なメンバーが集まって活動しています。
私たちが定義する「インクルーシブ病院」とは、病院を訪れる人たちだけでなく、そこで働くスタッフも含めた全員が排除されず安心して過ごせる場所のことです。そのような場をつくるために、ひとつでも現場ですぐに使えるもの、あるとよいものについて意見を出し合ったり、作成した資料を用いて医療機関向けの講演・研修を行ったりしています。

――今回のコラボレーションに至った経緯を教えてください。
清見:PwC Japanでは、LGBT+当事者のメンバーから「健診を受けにくい現状がある」という声が寄せられていました。連携相手となるPwC健康保険組合に伝えたところ、健保組合側でLGBT+当事者の方も安心して受診できる健診機関の基準を約5年前に策定することになり、現在も運用を続けています。(「トランスジェンダー対応のある健診機関」該当基準はこちら)
山内:基準を満たした健診機関にはレインボーマークを付与することになっており、それが一覧化されています。PwC Japanとしてもそれをメンバーに積極的に周知し、利用拡大に努めてきました。健保組合側では基準の見直しを重ねており、PwCJapanもこうした動きにあわせて数年前から企業の人事関係者に向けた外部講演も行っています。今後、より幅広い企業、団体や医療関係者に向けて情報発信していきたいと考えていたところでした。
清見:ちょうどそのタイミングで昨年のTokyo Pride 2025 Pride Parade & Festivalでまるクルのブースに出会い、活動の専門性と熱意、私たちやPwC健康保険組合の取り組みとの親和性を感じ、ぜひ連携したいと思いました。そこで今年はコラボレーションをしていただけないか、お声がけさせていただいたという経緯です。

麻生:PwC JapanとPwC健康保険組合の健診の取り組みを聞いて、私たちが目指す「誰もが安心できる医療環境」と親和性が高いと感じました。まるクルの活動を昨年からご存じだったことも心強く、メンバー一同「ぜひ一緒にやりたい」と快諾しました。

ブースでの対話で感じた、健診の現状と改善の必要性
――今回のブース出展で、特にこだわった展示や工夫について教えてください。
金:お互いの共通点を伝えられる場づくりを意識して、ブースの半分はPwC健康保険組合の健診基準策定のストーリーをパネルで紹介し、もう半分はまるクルが健診クリニックへコンサルティングをした事例など、具体的な活動を紹介する構成にしました。
麻生:ブースに立ち寄っていただいた方に何を伝えたいかを考えるにあたり、企画段階でPwC健康保険組合の方にヒアリングを行いました。すると、LGBT+当事者への対応だけでなく、多言語対応や障がい、治療のために特定の通院先がある方等にも考慮して健診プログラムを策定していることがわかり、とても驚きました。そのインクルーシブな取り組みへの本気度を、来場者にもしっかり伝えたいという思いがありました。
清見:展示では、実際にPwC健康保険組合の加入者に配布している、レインボーマーク付きの契約健診機関一覧の冊子を用意して、来場者に直接手に取ってご覧いただきました。健保組合の協力も得て、基準の運用についても具体的にお話できたことが良かったと感じています。
中根:まるクルは、過去のブース出展経験を活かし、通りがかった方に質問をしてシールを貼ってもらう企画を用意し、来場者が気軽にブースに立ち寄りやすくする工夫を凝らしました。まずは一歩足を止めてもらい、そこから自然に会話が生まれる導線作りを意識しました。

――当日、ブースを訪れた方々からはどのような反応がありましたか?
清見:想像以上に多くの方にブースにお越しいただきました。その中で、普段の業務の中ではなかなか接点を持つことが難しい当事者の方々と直接お話をする機会を得られたことが、非常に貴重な機会だったと感じています。 複数の当事者の方から、日々感じている具体的な困りごとを伺ったことが特に印象に残っています。例えば、「婦人科検診の待合で、女性の受診者と一緒に並ぶのが苦痛」、「配慮のつもりで個室に案内されるが、それが結果としてアウティング(本人の意に反して性的指向を周囲に知られてしまうこと)のように感じて、心が傷ついた」といった声です。健康診断や検診の場面で、困っている方がまだ多くいる現状を直接伺い、私たちやPwC健康保険組合の取り組みの意義を再確認しました。
後藤:今回のコラボブースでは、来場者の方にシールを貼っていただくことをきっかけに会話できたのがよかったです。まるクルのチラシやステッカーを渡して、自分たちの活動を直接紹介することもできました。
今回のブース出展を通じて感じたことをもう一つ挙げると、私は今回初めてPride Parade & Festivalに参加したのですが、出展者も来場者も個性的な人がたくさんいて、自分らしさを臆することなく表現しているんです。この空間がとてもいいなと素直に思えました。

互いの力を借りて広がった、届けたい人へのメッセージ
――今回、コラボレーションしたからこそ実現できたと感じることはありますか?
清見:私たちだけではつながることが難しかった医療従事者の方々にメッセージを届けられた点が、大きな成果だと感じています。医療現場に詳しいまるクルと一緒に出展したことで、より多くの方にブースへ立ち寄っていただきました。
金:私たちも同じ思いです。PwC JapanやPwC健康保険組合の取り組みに興味をもった方にも、まるクルを含む医療現場での取り組みの存在を伝えられました。医療従事者に対して、PwC Japanというグループの取り組みを紹介できたことも大きな成果です。
さらに、PwC Japanのメンバーの方にも多くブースに立ち寄っていただき、医療現場での取り組みをお話できたのも嬉しかったです。メンバーの皆さんと話をしている中で、レインボーマークがある健診機関が当たり前の存在になっていると感じました。健診基準の取り組みについて、私たちのような外部の立場から伝えることで、企業がメンバーを大切に思ってこその取り組みであることを再認識いただいたようです。この点において、私たちが一定の貢献をできたと思っています。
「当たり前の安心」を届けるために、私たちが歩み続ける道
――今回のコラボブース出展を経て、今後どのような展開を考えていますか?
清見:制度や仕組みを作るだけでなく、それを必要としている人に「届ける」ことの重要性を強く感じました。今回のブースでいただいた生の声を持ち帰り、まずはPwC健康保険組合の基準の見直しや周知につなげることで、PwC Japanのメンバー一人ひとりが自分らしく成長できる機会を増やしていきたいです。また、当グループの取り組みが参考になるのであれば、他の企業でも積極的に取り入れてもらえたら嬉しいです。
金:今回のコラボのように、組織の垣根を超えてつながることが社会全体の意識を変えるきっかけになると考えています。まるクルとしては、インクルーシブな医療を提供している企業や医療機関があることを紹介しながら、一人でも取り組めることがあることを伝え、現場に届け続けたいです。
こうした思いを形にする場として貴重なのが、Pride Parade & Festivalです。来場者の方と直接話ができる大切な機会ですし、自分たちが励まされる時間にもなっています。これからも対話の場をつくりながら理解を広げることで、誰もが安心して過ごせる医療現場の実現を目指したいと思います。





































































































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