キンドリルジャパン株式会社
Kyndryl Japan
「当事者であることを、意識しなくて済む」。キンドリルジャパンが5年間で築いた、本当に働きやすい職場とは

2021年の設立当初から、Tokyo Pride Pride Parade & Festival (2024年までは、東京レインボープライドの名称にて開催。)への参加を続けるキンドリルジャパン。work with Pride「PRIDE指標2025」では、レインボー認定2年連続、ゴールド認定4年連続を取得し、社内のアライは数百人規模に広がった。5年間で積み上げてきたもの、そして目指す職場の姿とは? LGBTQ+当事者を含め、活動を支えるメンバーたちに話を聞いた。
取材・文/中村 茉莉花 撮影/清原 明音
インダストリー統括 製造事業本部長 執行役員 塩見 寛行様
取締役 常務執行役員 人事担当 伊奈 恵美子様
法務セキュリティ 兼 KINs LGBTQ+ Japan member 緋田 宇子様
プラクティス事業本部 クラウドデリバリー 兼 KINs LGBTQ+ Japan member 上田 菫様
技術職 広瀬 みずき様(仮名)
人こそが最も重要な価値 一人ひとりのパフォーマンスを最大化するために
――キンドリルジャパンでは、エンゲージメントが高く、インクルーシブな企業文化の醸成を促進されて います。どのような理由からでしょうか。
伊奈 恵美子さん(以下伊奈) キンドリルは世界60カ国以上でエンタープライズ・テクノロジー・サービスを提供しています。製品を持たず、社員がサービスを提供することをビジネスの根幹としているため、「人」こそが最も重要な価値であると考えています。多様な人材一人ひとりが生き生きと力を発揮し、パフォーマンスを最大化するために、インクルーシブな環境づくりは欠かせません。
昨年から始まった「Kinship at Kyndryl(キンシップ・アット・キンドリル)」は、そうした考え方をさらに包括的な形にしたものです。Kinshipは4つの柱で構成されています。誰もが受け入れられる環境を育む「BE included」、心身の健康を大切にする「BE well」、成長に向けてキャリア形成を後押しする「BE ready」、そしてより良い社会への貢献を目指す「BE impactful」。すべての社員が受け入れられ、健やかに働きながら、お客様や地域社会との絆を通じて、幸せに成長できる職場を目指す取り組みです。キンドリルの「Kyn」という語は、人と人との親密なつながりを意味するKinshipに由来しています。「人」が何より重要な会社だからこそ、私たちはストラテジーの中核にこの「Kinship at Kyndryl」を据え、グローバル全体で取り組みを進めているんです。

取締役 常務執行役員 人事担当 伊奈 恵美子様
――人事評価の仕組みにも、この思想は根付いているそうですね。
伊奈 「Compass(コンパス)」と呼ばれる評価制度では、ビジネス成果と「Responsibility to Others(他者への貢献)」が50対50の割合で評価されます。コミュニティ活動への貢献も明確に評価基準に含まれていて、インクルーシブな会社環境を作るために、自分は何ができるのか、社員一人ひとりが考えるきっかけになっています。人事評価以外にも、「Kyndryl Cheers(キンドリル・チアーズ)」という社員同士が感謝を伝え合う仕組みも、インクルーシブな文化の醸成を下支えしていると感じています。

Tokyo Pride 2025 – Pride Parade参加の様子
アライは数百人規模。社長や役員も積極的に関わる
――ERG(従業員リソースグループ)であるKyndryl Inclusion Networks(KINs)のLGBTQ+コミュニティへの参加者は、設立5年で数百人規模に広がりました。
塩見 寛行さん(以下塩見) 2021年の会社設立直後に、ひとりの社員が「コミュニティを作りたい」と考え、自ら行動を起こして立ち上げたのが、KINs LGBTQ+ Ally Japan Communityです。トップダウンではなく、社員主導の自発的なスタートでした。私はエグゼクティブ・スポンサーとして、経営陣と社員の橋渡しをすることを心掛けています。活動が一部の社員だけに留まるのではなく、多くの社員が知って、関与できるものでありたいと考えています。活動について、経営陣にも説明し理解を深めることにより、アライの数は全社的に増加しました。社長も毎年Pride Paradeに参加するなど積極的に関わっており、今年のTokyo Prideについても、ずいぶん前から開催日のスケジュールを確保し、楽しみにしてくれています。

インダストリー統括 製造事業本部長 執行役員 塩見 寛行様
緋田 宇子さん(以下緋田) KINs LGBTQ+ Ally Japan Communityでは毎月1回、ランチタイムに日本アイ・ビー・エムと共同で「アライ・ラウンジ」をオンラインで開催しています。LGBTQ+に関心があれば誰でもウェルカムな場で、毎回参加者は70〜80名ほど。LGBTQ+に関するニュースの共有や映画・音楽の紹介など、さまざまなテーマを扱いながら、自由にディスカッションする時間を設けています。塩見さんや伊奈さんをはじめ、エグゼクティブの方もゲストとして参加してくださり、アライの輪を広げる重要な場になっています。
――入社3年目の上田さんは、このような環境をどう感じていますか?
上田 菫さん(以下上田) 私は入社1年目からTokyo Prideに参加し、昨年からは2年連続でイベントのリードを務めています。年次に関わらず、やってみたいという情熱があれば、誰もが背中を押してくれ、挑戦を否定する人はいません。ためらわずに挑戦できる環境が、キンドリルの心地よさだと実感しています。

プラクティス事業本部 クラウドデリバリー 兼 KINs LGBTQ+ Japan member 上田 菫様
キンドリルでは、自分が当事者であることを意識しなくて済む
――ここからは、LGBTQ+当事者である広瀬さん(仮名)にお話を伺います。広瀬さんは、キンドリルに入社される前と後で、職場でのご自身のあり方に変化はありましたか?
広瀬 みずきさん(仮名・以下広瀬) 私はトランスジェンダーの当事者で、技術職をしています。キンドリルに入社してから、自分が当事者であることを意識する機会が少なくなりました。仕事により集中できるようになり、パフォーマンスも自然と上がったと感じています。
前職では、お客様先に常駐して仕事をしていたのですが、上司から「あなたは人を欺いて生きている。性別についてお客様にカミングアウトしないのは不誠実だ」という言葉を投げかけられました。職場でのカミングアウトを強制させられたり、お客様側から「全社員にアンケートを取ってからじゃないと仕事をさせられない」と告げられたり。いつ自分が晒し物にされるか、あるいは退職させられるかわからないという恐怖を常に抱きながら仕事をしていたんです。
――そのような環境で良いパフォーマンスを出すのは難しいのではと感じます。キンドリルに移られてからは、メンバーにセクシュアリティについてカミングアウトされているのですか。
広瀬 キンドリルには他人のプライベートに土足で踏み込まない社風があります。セクシュアリティについて根掘り葉掘り聞かれることもないですし、伝えたところで「それが仕事にどう影響あるの?」という、フラットな反応が返ってくるだけではないでしょうか。アライの集まりで「当事者は皆さんの近くにもいますよ」と話すことはありますが、相手に気を遣わせてしまわないよう、普段はとくに表に出してはいません。特に言う必要も感じない、というのが正直なところです。
――アライの方々に伝えたいことはありますか。
広瀬 現状でも満足していますが、強いて言うならば、もう一歩知識を深めていただけたらうれしい、ということ。性別不合および性別違和は医療とも深く関わるテーマです。アライの方がそうしたことにも興味を持って学んでくれれば、より理解が広まるのではないでしょうか。
また、ときどき善意からなのか「あなたたちは素晴らしい」と言ってくれる人もいますが、私たちは特別視されることを望んでいるわけではありません。普通に接してもらえるのが一番ありがたいですね。
――キンドリルが進めるインクルージョン&ビロンギング(帰属意識)に関する施策に関して、どう受け止めていらっしゃいますか。
広瀬 会社が率先してKinship at Kyndrylの取り組みを進めてくれることは、私たち当事者にとって非常に心強いことです。前職では上司ひとりの価値観や判断で、職場での立場が危うくなることもありました。キンドリルでは会社の方針があることで、アライではないメンバーでも、何かを判断するときの指針になる。心から安心して働くことができます。
ただ、LGBTQ+に関する施策は、どうしても大企業ばかりが中心になってしまいがちです。大企業より中小企業のほうが圧倒的に多い日本では、性的マイノリティは心地よく働ける就職先がなかなか見つからない、という事態に直面してしまいます。
ネットなどでは「(性的マイノリティでも)有能だったら採用しますよ」といった企業側のメッセージを目にすることもありますが、平均的なパフォーマンスでは、私たち当事者は働く権利さえ持てないのでしょうか。当事者を受け入れる取り組みが日本全体に広がり、誰もが働くことに不安を抱かないような社会になればと願っています。
社会を変える絆。Tokyo Pride 2026を通して、今度は自分が勇気を与えたい

――最後にTokyo Pride 2026 Pride Parade & Festivalに向けた意気込みや、読者へのメッセージをお願いします。
塩見 当日に向け、数十人のボランティアがアイデアを出し合いながら、準備を進めています。パレードやブース運営、社内外のコミュニケーションなど、各タワー(役割)ごとのリーダーも自ら手を挙げて集まってくれました。楽しいブースになると思いますので、ぜひ多くの方にブースにお立ち寄りいただき、我々の活動を知っていただけたらと思います。LGBTQ+の当事者には、周囲にカミングアウトしている人もしていない人もいます。イベントに参加し、会社が安心できる環境であると発信し続けることで、誰もがますます自分の能力を存分に発揮できる社会になることに少しでも貢献できればと思っています。
上田 キンドリルジャパンは昨年に引き続き「私たちの絆が社会を変える/PridePoweringProgress」をテーマとしました。ブースでは韓国を始め日本でも流行しているPhotomaticというセルフフォトブースを導入します。今年のTokyoPrideのテーマに紐づくように、多様性やありのままの自分を写真に収めるという体験をご用意しています。今年で3回目の参加となるパレードには、社員だけでなく、家族や友人・パートナーも参加可能で、今年も200名以上の参加を予定しています。来場者の皆さんに昨年以上に楽しんでいただけるよう、またこのイベントが社員にとって価値のあるものとなることを目指し、一丸となって準備しています。是非、足をお運びいただきたいです。
緋田 エグゼクティブの方々の協力のおかげで、社内の取り組みが加速し、インクルーシブな文化が醸成されていると感じます。私は子育て中ということもあり、現在の学校教育に疑問や憤りを感じることもしばしば。Tokyo Prideをはじめとしたキンドリルの取り組みが、社会全体、ひいては子供たちの教育現場の変化につながることを願っています。
広瀬 私が初めて東京レインボープライドを訪れたのは2014年ごろ。世の中ぜんぶが敵に見えていた辛い時期でした。多くの人々が盛り上がっている様子を会場で目の当たりにし、大きな勇気をもらったことを覚えています。今度は自分が勇気を与えられる側として参加できればと思っています。
伊奈 キンドリルでは多様な人材が世界中で働いていることが自然であり、“普通”なこと。私たちの取り組みを通して、社会全体に影響を与えていきたいと思っています。また、私たち一社だけでは限界があるので、より多くの企業様と共に、インクルーシブな環境づくりを進めていきたいですね。
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「当事者であることを、意識しなくて済む」。その静かな安心感は、周囲の理解と会社の姿勢が5年間積み重なった先にある。今年もキンドリルジャパンはPride Parade & Festivalに集い、社員とその家族、そして来場者とともに歩く。その絆が、社会を少しずつ、確かに変えていく。




































































































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