MSD株式会社
MSD K.K.
「知る」ことから世界は広がる。MSDが実践する、すべての人に寄り添うD&I活動
MSD株式会社は、Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA(米国とカナダ以外ではMSD)の一員として、日本で医療用医薬品、ワクチン、動物用医薬品を提供する製薬企業だ。同社は、「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」の推進に力を入れ、多様な人財がその能力を最大限に発揮できる環境づくりに注力。その一環として、LGBTQ+への理解促進を目的とした社員ネットワーク(Employee Business Resource Groups; EBRG)「Rainbow Alliance」がグローバルで展開されている。
日本法人であるMSD株式会社では、2019年に「Rainbow Alliance Japan Chapter」が始動し、社内外での啓発活動を積極的に行ってきた。Tokyo Pride – Pride Parade & Festivalにも継続して協賛・参加しており、社員によるブース運営や経営陣を交えてパレードに参加している。
今回は、MSD株式会社 執行役員 広報部門統括であり、Rainbow Alliance Japanの立ち上げ時からスポンサーを務める山下 節子さんに、ご自身の原体験や活動への思い、そして製薬会社としてのD&Iへの向き合い方について話を聞いた。
執行役員 広報部門統括 山下 節子さん
ニューヨークでの生活が教えてくれた「多様性」の豊かさ
――MSDはどのような会社ですか。また、Rainbow Allianceについて教えてください。
山下 節子さん(以下同) MSDはアメリカに本社を置くグローバルな製薬会社で、医療用医薬品、ワクチン、動物用医薬品などの開発・製造を通じて、「すべての人の健康」を追求し続けています。 Rainbow Allianceは、グローバルでは1990年代から活動しているEBRGで、日本法人では2019年に立ち上がりました。
――山下さんは、Rainbow Alliance Japanの立ち上げ当初からスポンサーをされていますね。
私は以前、アメリカのニューヨークにある別の製薬会社で働いていたのですが、そこではLGBTQ+の当事者の方々がトップ層にもいて、EBRGの活動も当たり前に行われていました。MSDのグローバルでも同じように活発でしたが、私が会社に入った2016年当時は、まだ日本にはありませんでした。「もし日本で立ち上がるなら、私が絶対にスポンサーになりたい」と手を挙げていたんです。
――ご自身の海外でのご経験が、スポンサーを引き受ける原動力になったのですね。
私は1992年に米国の大学院を卒業したあと、ニューヨークのマンハッタンで働き始めました。当時はまだ治安も少し不安な時代で、知り合いもいない中で一人暮らしを始めたんです。その時、近所に住んでいた男性に誘われてクリスマスパーティにお邪魔したら、男性ばかりで。話してみたら、みなさんゲイでした。
――その出会いが、多様性を肌で知るきっかけになったのですね。
当時はまだ、ゲイの方と深く関わった経験がなかったので最初は驚きましたが、それをきっかけに多様なバックグラウンドを持つ友人らも増え、私自身のネットワークも広がり、一緒にニューヨークのレインボー・パレードを歩くまでに至りました。
彼らと日々過ごす中で、私は「多様性」の素晴らしさを肌で学びました。人間としての感情や悩みは同じだし、違う世界の人と話すことで自分の世界がどれだけ広がるかを実感したんです。だからこそ、日本に帰ってきてからも、誰もが当たり前に、自分らしく生活できる社会を作るお手伝いがしたいと強く思うようになりました。
「知る」「つながる」「発信すること」が理解への第一歩
――2019年に日本でRainbow Allianceが立ち上がった経緯を教えてください。
当事者である社員が声を上げ、最初は数名からスタートしました。当社は同性パートナーも事実婚も、法律婚と同じように福利厚生などの制度を受けられるのですが、その制度の拡大も、当事者の社員が社長に直接「こんな制度を入れてほしい」と交渉したことがきっかけだったんです。そうした動きと連動するようにEBRGが立ち上がり、私は宣言通りスポンサーとして参加しました。
――広報のトップとして、「知ること、つながること、発信すること」を大切にされているそうですね。LGBTQ+の理解促進においても、なぜそれが重要なのでしょうか。
何事も、まず「知る」ことから始まります。私は製薬業界に長くいますが、例えば「過活動膀胱」のように、昔は病名すら知られていなかった疾患も、製薬企業などが発信して知ってもらうことで、悩んでいた人が病院に行き、より良い生活を送れるようになります。LGBTQ+に関しても同じです。
日本ではまだ、当事者の方と身近に接する機会が少ない人も多いでしょう。だからこそ、私たちが活動を通じて発信し、まず「知ってもらう」。そして、セミナーやパレードなどの機会を通じて「自分ごと」として「つながる」ことが、深い理解への第一歩になると考えています。
――社内の変化を感じることはありますか?
例えば、私たちが初めて北海道のパレード(さっぽろレインボープライド)に参加した際、現地の営業所のアライの社員が手伝ってくれました。彼らはそこで「知る」経験をしたことで、その後わざわざ東京や九州のパレードにも手伝いに来てくれるようになったんです。知ることで、次の行動へとつながっていくんでしょうね。
社内カフェテリアのデジタルサイネージ
沿道の笑顔と「One MSD」でつながる感動
――Tokyo Prideへの参加を通じて、社内にどのような変化を感じていますか。
年々、アライとして参加してくれる社員が増えています。立ち上げ当初は数名だったメンバーが、今では100名を超えました。パレードには、埼玉県熊谷市の妻沼工場や、全国の営業所からも社員が集まります。特に妻沼工場からはバスを出し、社員だけでなく、家族やパートナー、大切な人なら誰でも一緒に参加できるようにしているんです。
今年は「レインボーウィッシーズリレー(Rainbow Wishes Relay)」と題し、Tokyo Prideで持って歩く横断幕に、全国の営業所や妻沼工場の社員がメッセージを書き込む企画も行っています。東京に来られない社員も、横断幕に思いを託すことで、同じパレードを一緒に歩いているようにつながれるんです。
パレードで使用する横断幕
そうして、普段は離れた場所で働いている仲間が、「One MSD」として一つの場所に集まり、思いを重ねながら一緒にパレードを歩く。これは本当に感動的な体験です。参加した社員はみんな、「来てよかった」と最高の笑顔を見せてくれます。
――社員の皆さんは、パレードのどんなところに感動されるのでしょうか。
私たちが歩いていると、沿道の方々も「ハッピープライド!」と声をかけてくれて、ハイタッチをしてくれます。その光景を見るたびに、「会場や沿道に集まる人たちがもっと幸せそうな顔で暮らせる社会であってほしい」と強く思い、涙が出そうになりますね。
社長や役員も一緒にパレードを歩きます。トップが自ら行動で示すことで、社員も「自分らしくいていいんだ」「ここが自分の居場所なんだ」と実感できる。それが、安心して力を発揮できる環境づくりにつながっていると思います。
「患者さんを第一に」——多様性が生み出すイノベーション
――「患者さんを第一に考える」という企業理念と、D&Iはどのようにつながっているのでしょうか。
私たちの使命は、「Everything for patients(すべては患者さんのために)」です。患者さんご自身が多様な存在である以上、私たち製薬会社の考え方も多様でなければなりません。同じようなバックグラウンドの人たちだけで机に向かっていても、新しいアイデアは生まれません。外に出て、さまざまな立場の人、当事者の方々の声を聞き、現実を知ることが不可欠です。
MSDでは、日頃から「Speak up(意見を言うこと)」を奨励し、互いの意見を最後まで聞く文化を大切にしています。LGBTQ+の方々がどんなことで困っているのか、どうすればより良い環境を作れるのか。そうした声に耳を傾ける姿勢こそが、未知の疾患に対する新薬開発や、新しい価値の創出といったイノベーションの源泉になるのだと信じています。
――今年のTokyo Prideのテーマ「多様性と平等がひらく未来」によせて、メッセージをお願いします。
社会の価値観を変えていくには、どうしても時間がかかります。東京などでは少しずつ理解が進んでいても、まだ難しい現実を抱えた地域もあるでしょう。それでも、諦めずに少しずつ活動を広げていくことが大切です。多様性を重視することは、社会にとって必要なだけでなく、自分自身の世界を豊かに広げてくれる素晴らしい経験でもあります。これからも、一人でも多くの人が「知る」機会を作り、皆で助け合いながら、自分らしく生きられる社会を目指して歩みを続けていきたいと思います。
*
「すべては患者さんのために」。その切実な使命は、まず目の前にいる多様な人々の声を知り、深く理解することから始まる。数名の当事者の声から立ち上がったMSDの「Rainbow Alliance」は、今や全国の営業所や工場から社員とその家族が集う「One MSD」の大きな輪へと成長した。
製薬企業として命と向き合い続けるMSDの真摯な歩みは、誰もが自分らしく生きられる社会へと、確かな希望をつないでいく。






































































































.png)










.jpg)














