Tokyo Pride 2026
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ヴィーブヘルスケア株式会社

ViiV Healthcare

「HIVとともに生きる人を、誰ひとり置き去りにしない」。ヴィーブヘルスケアが11年間で築いてきたコミュニティとの連帯

ヴィーブヘルスケア社(以下ViiV)はグラクソ・スミスクライン社(以下GSK)の関連会社で、HIV感染症に特化したスペシャリストカンパニーだ。2016年からTokyo Pride Parade & Festival(2024年までは東京レインボープライドの名称で開催)へのスポンサーを続け、今年で11年目を迎える。今年は最高位の「レインボースポンサー」として名を連ねる同社。

社内にとどまらず、コミュニティ、そして製薬業界全体へとインクルージョンの輪を広げ続ける、その原動力はどこにあるのか。

同社でエクスターナル・アフェアーズを担当する笹井 明日香さんと、メディカルアフェアーズ部門に所属し、GSKを含むグループ横断従業員リソースグループ(ERG)「Spectrum JAPAN」のCo-Lead(共同代表)を務める岡本 紀子さんにお話を聞いた。

取材・文/高松 孟晋 撮影/望月 勇輝

変わる社会と、いまだ根強く残るHIVへの「情報のアップデート不足」

――スポンサー11年目となりますが、社会やコミュニティの変化をどのように感じていらっしゃいますか。

笹井 明日香さん(以下笹井) 当社は「HIVとともに生きる人を誰ひとり置き去りにしない」というミッションを掲げる、HIV/エイズに100%特化したスペシャリスト・カンパニーです。グローバル製薬企業であるGSKグループで、日本法人には50名ほどが在籍しています。その中で私は、患者支援や広報などを担当しています。

普段はHIV陽性者の方の声を医療従事者に届けたり、当事者支援やピアサポートを行うNPOの皆さんとコミュニケーションを取りながら、疾患啓発活動を行っています。Tokyo Pride(当時は東京レインボープライド)のスポンサーブースには初年度からずっと関わってきました。

私たちが携わり始めた頃に比べると、HIV/エイズに関する正しい知識も徐々に浸透し、Tokyo Prideに参加する製薬企業も非常に増えました。こうした業界全体の前進を、とても心強く感じています。

エクスターナル・アフェアーズ ヘッド 笹井 明日香さん

――確かに、治療は大きく進歩しているのに、昔のイメージのまま止まっている方もいらっしゃいますね。

笹井 そうなんです。現在では治療を継続してウイルス量を抑えられていれば、性行為で他者に感染することはないという「U=U(Undetectable = Untransmittable(*))」という重要な事実も、少しずつコミュニティの努力で広がってきました。

しかし、地方での情報格差や、教育現場で正しい情報が伝えられていないという現状もあります。私たちは、科学的に正確で、かつ当事者や周囲の方々の「尊厳」を軸においたコミュニケーションを、粘り強く続けていかなければならないと考えています。

(*)治療継続により血中ウイルス量を検出限界値未満に抑え、その後も少なくとも6か月維持されている場合、性行為によってHIVが感染することはない、という考え方。

「自分事」として捉える。社内啓発の深化とリアルなケーススタディ

――社内でのSOGIE(*)ハラスメントに関する啓発活動はどのようなものがありますか。
(*)ソジー。Sexual Orientation(性的指向)、Gender Identity(性自認)、Gender Expression(性表現)

岡本 紀子(以下岡本) 全社員必須で基礎知識を学ぶeラーニングと、対面でのワークショップを組み合わせています。eラーニングは取り入れやすい一方で、どうしても「受け身」になってしまいがちな点があります。そこで、より「自分事」として捉えてもらうために、対面でのワークショップを実施しました。特徴的なのは、ケーススタディの内容です。

メディカル・アフェアーズ部門 メディカル インフォメーション サイエンティスト 岡本 紀子さん

笹井 「良かれと思って同僚が上司にアウティングしてしまったケース」や、「飲み会でその場にいない人のセクシュアリティを、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)からいじってしまうケース」などを扱いました。

岡本 特に飲み会のケースはERGのメンバーが綿密に作り込んだものです。その場にいる服装がおしゃれな男性社員に対して「〇〇さんも『そっち系』なんじゃない?」と軽口をたたき、「いやいや…」と笑ってやり過ごさざるを得ないという、非公式な場で起こりがちな非常にリアルなシチュエーションを描いています。

ケースでは登場人物のセクシュアリティが一切明示されていないので、グループワーク自体も参加者自身の「思い込み」があぶり出される内容になっています。

――二重にアンコンシャスバイアスを引き出す作りになっているんですね。

笹井 はい。この飲み会のケースは、初回のアウティングをテーマにしたワークショップを実施した際に、GSKの社長をはじめ経営陣から「こうしたことは飲み会シーズンに最も起きやすいと思うから、年末までにやってほしい」と要望が出たものでした。ViiV自体は50人ほどの小さな会社ですが、GSKグループの2,500人規模の社員へも経営陣主導で順次展開され、心理的安全性の高い職場づくりにつながっています。

ワークショップの様子(提供:ヴィーブヘルスケア社)

企業から業界・社会を動かすネットワークへ 

――最近では、他社との連携や社会への働きかけも活発ですね。

笹井 はい。医療系企業のERGネットワークである「Pharma Ally Japan(PAJ)」は、現在9社まで広がりました。人事主導ではなく、ERGを持つ企業の担当者が集まり、各社の知見や課題を共有しています。今年のPride Festivalでも、出展している製薬企業のブースを巡るシールラリーを企画しており、求職者の方々にも「この業界はLGBTQ+フレンドリーだ」と伝わればと思っています。

岡本 製薬会社の使命として必要とする方に薬を届けることはもちろんですが、当事者の方が安心して医療や支援につながれる社会環境も不可欠です。最近では、別の製薬グループの呼びかけに賛同し、「LGBT理解増進法」の基本計画において、平等に医療を受けられるようにしてほしいという要望書の連名にも参加しました。企業が一緒に声を上げることで、社会の変化を後押ししたいと考えています。

「Pharma Ally Japan(PAJ)」のロゴ(提供:ヴィーブヘルスケア社)

一緒に歩む「仲間」として。コミュニティとの共創

――Pride FestivalでのNPOやコミュニティとの共創は、ViiVの大きな特徴です。

笹井 ぷれいす東京やaktaをはじめとするNPOの皆さんとの関わりは、私たちにとってなくてはならないものです。

岡本 特に複数の団体が一堂に会するPride Festivalでのブース出展は「自分とは関係ない」と思っている参加者の方に自分事にしてもらう大きな意義がある機会だと捉えています。

笹井 昨年は合同ブースでクイズラリーを行ったのですが、そこで改めて気づきがありました。「HIVのコンビネーション予防」というテーマだったのですが、その反響は予想以上に大きいものでした。反響が大きくて良かった反面、それぞれの立場の人に情報を伝える難しさも浮き彫りになりました。

例えば「HIVの予防」という言葉を使いすぎると、HIV陽性の方にとっては「自分はすでにかかっているから関係がないものだ」と捉えられてしまうこともあります。また、社会では「HIVの撲滅」という言葉を使うことがありますが、私たちコミュニティでは「撲滅」という言葉を基本的に使うことはありません。HIVの陽性当事者の方も多様性のひとつであり、その存在を否定することになるからです。

クイズラリーを完成させると引ける「レインボーおみくじ」(提供:ヴィーブヘルスケア社)

――当事者の方と直接接しているからこその、細やかな配慮ですね。

笹井 はい。Pride Festivalという場があるからこそ「あの言葉の使い方はちょっと気をつけて」とダイレクトにフィードバックをもらえますし、そういった意見をいただけることは、一緒にやっていく「仲間」として認められていることだと捉えています。

岡本 いただいたご意見は次の企画に反映し、その繰り返しによって築かれた「ViiVは、ずっと一緒にやってくれているよね」という継続性と信頼関係が、コミュニティの皆さんの安心感につながっていると言っていただくこともあり、大変ありがたく思っています。

昨年は、Pride Paradeで一緒に歩いた取り組みの成果を、NPO団体の皆さんが日本エイズ学会で発表してくださったんです。企業とコミュニティの継続的な関係性が、そうした学術的な場での発信にまでつながったことは、本当に嬉しい出来事でした。

「HIVとともに生きる」こともまた、多様性の一部

 

イベント当日にも使用する数々のレインボーグッズ

――最後に、今年のTokyo Prideへの思いと、ブースの見どころを教えてください。

笹井 今年のブースも「夏祭り」をテーマに、各NPOのブースを回ってクイズに答え、最後におみくじを引いてもらうという、楽しく学べる企画を用意しています。私たちのブースに来てくださる方の8割は、初めて立ち寄ってくださる方です。だからこそ、心理的ハードルを下げて気軽に体験してもらい、明日からの行動が一つでも変わるきっかけになれば嬉しいです。

岡本 世界的に見ても、HIV陽性者の方々は「疾患への偏見」と「セクシュアルマイノリティへの偏見」という二重のスティグマに直面し、医療アクセスの障壁になっている現実がいまだにあります。今年の「多様性と平等がひらく未来」というテーマの通り、「HIVとともに生きる」ことも、セクシュアルマイノリティであることも、同じ多様性の一部だと考えます。

笹井 今年は社内の熱量も高まった結果、念願だった「レインボースポンサー」として参加します。違いを特別視するのではなく、正しく理解し尊重し合える社会を作るために。ぜひブースに足を運んでいただき、当事者の方もそうでない方も、HIV/エイズについて何かアップデートして帰っていただければと願っています。

*

長い歳月をコミュニティとともに歩み、今年は最高位のスポンサーとして社会へ連帯を呼びかけるヴィーブヘルスケア。同社が粘り強く発信し続けるその静かで力強い決意は「多様性と平等がひらく未来」に向けた、確かな推進力になるだろう。

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